抄録
1996年大阪で発生した,腸管出血性大腸菌O-157感染のアウトブレイクのため,大阪大学医学部で治療した小児8例の血中サイトカインと溶血性尿毒症症候群 (HUS) との関係について検討した。急性腎不全を呈した症例は5例,腎不全を呈さなかった症例は3例であった。血中白血球数,血小板数およびLDH値は,急性腎不全を呈した症例と腎不全を呈さなかった症例で有意差はなかった。血中サイトカイン値では,IL-6およびTNFα値は,腎不全の有無で有意差を認めなかったが,IL-10値は腎不全を呈した症例では腎不全を呈さなかった症例と比較して有意に上昇していた。また,血中IL-10値は,血中クレアチニン値と有意な正の相関を示した。血中IL-6値は,血中白血球数および血中CRP値と有意な正の相関を示した。血中IL-6および TNFα値は,血漿交換あるいは,交換輸血療法により低下したが,血中IL-10値はこれらの治療により変化しなかった。以上の結果より,IL-10は腸管出血性大腸菌O-157感染後のHUS発症と関係する因子の1つであり,また,IL-10の産生部位は流血中の単球,マクロファージ,Tリンパ球などが存在する血管内ではなく,腸管あるいは腎臓である可能性が示唆される。