日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
ステロイドが著効を呈した特発性膜性腎症の2例
安田 一恵今村 啓作栃丸 博幸
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1998 年 11 巻 1 号 p. 91-96

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抄録

 ステロイド投与が奏功し,比較的早期に尿蛋白の喪失が認められた特発性膜性腎症の2例を経験したので,その治療経過を報告する。症例は7歳女児,13歳男児で,いずれも学校検尿で蛋白尿,血尿を指摘され,腎生検でstageIIであった。1g/day以上の蛋白尿と低蛋白血症を認め,prednisolone 2mg/kg (max 60mg) 内服の治療を開始し,7~10週後に尿蛋白は陰性化した。prednisoloneは漸減中止したが,各々5年6カ月,1年の観察期間,蛋白尿の再燃はみられていない。特発性膜性腎症に対する,ステロイドをはじめとする治療の選択は議論の多いところであるが,今回のような,基底膜病変が高度に進行しておらず尿蛋白が一定以上認められる症例では,ステロイド剤が有効であることが示唆された。今後,特発性膜性腎症における治療法の確立が待たれる。

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© 1998 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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