1998 年 11 巻 2 号 p. 197-202
症例は生後3カ月の男児。生後2カ月頃より徐々に浮腫が出現し当科入院となった。入院時低蛋白血症,高コレステロール血症,1日尿蛋白10gを認め,ネフローゼ症候群と診断した。腎組織検査はdiffuse mesangial sclerosisであった。ステロイドおよび免疫抑制剤は無効であった。1歳よりACEI (エナラプリル0.06mg/kg/day) 投与を開始したところ尿蛋白は減少し始め,エナラプリル投与を0.2mg/kg/dayまで増加した時点で尿蛋白は消失した。2回目の腎生検 (2歳) では,糸球体硬化病変は進行し,間質への細胞浸潤が増加していた。エナラプリル投与開始2年6カ月後の現在,腎機能は正常範囲を維持し,身体発育,精神運動発達は良好である。またエナラプリルによると考えられる副作用は特に認めていない。したがって本症例のような多剤に抵抗性の乳児ネフローゼ症候群においても,ACEIは試みられるべき治療法と考えられた。