抄録
巣状糸球体硬化症様の上皮細胞の増殖がみられたIgA腎症の7歳の女児例を経験した。血尿およびネフローゼレベルの尿蛋白がみられた。初回腎生検ではびまん性のメサンギウム細胞の増加と基質の増生, 半月体形成, 管内増殖病変, 糸球体基底膜の二重化がみられた。また, 巣状糸球体硬化症でみられるような糸球体上皮細胞の増生, 腫大が認められた。蛍光抗体ではIgAがperipheral patternで優位に陽性であり, 電顕ではパラメサンギウムから内皮下にelectron dense depositの沈着を認めたため, IgA腎症と診断した。ヘパリン併用下にステロイドのパルス療法を3クール施行後, カクテル療法へ移行した。徐々に尿蛋白は減少傾向となり, 血清アルブミン値も上昇した。治療開始後6カ月の再生検では, 軽度もしくは中等度のメサンギウム増殖性病変が主体となり, 糸球体上皮細胞の増生, 腫大も改善傾向を示し, 治療に反応がみられた。