2005 年 18 巻 1 号 p. 37-42
特徴的な画像所見から腎リンパ管拡張症と考えられた男児例を経験した。症例は1歳男児。発熱,下痢と嘔吐をきたし,近医で点滴補液を受けた直後に胸腹水の貯留が出現した。多血症も指摘され併せて精査されたが原因は不明で,経過とともに胸腹水は消失した。同様のエピソードを繰り返し,転居に伴って当科に紹介された。腹部エコーでは腎腫大と皮髄境界の不明瞭化,MRI検査で腎盂周囲の嚢胞,後腹膜腔の液体貯留と腎周囲膜様構造物などを描出し,腎リンパ管拡張症と考えられた。腎機能低下は認めず自然軽快の報告もあることや生検後の合併症の可能性などから,腎生検は行わなかった。本疾患は小児期に発症する嚢胞性腎疾患では非常にまれで報告例も少なく,また本症例は原因不明の多血症も伴っており,興味深い症例と考えられたので報告した。