2005 年 18 巻 1 号 p. 43-47
急激に進行するステロイド抵抗性のネフローゼ症候群として発症し,腎生検でびまん性メサンギウム硬化症(DMS)と診断し得た一例を経験した。本症例は,Wilms腫瘍抑制遺伝子(WT1)の変異がDenys-Drash症候群に特異的な部位に存在したことから不全型のDenys-Drash症候群と考えられた。乳幼児期に腎機能障害が急激に進行するステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の症例ではDMSである可能性を考えて早期に腎生検を行うとともに,WT1 についての遺伝子学的検索が重要である。WT1 の変異を確認した場合には変異によってはWilms腫瘍発生のリスクが高く,注意深い経過観察と腎移植時の予防的腎摘出を考慮する必要があると思われた。