日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
トシル酸スプラタストによるステロイド依存性ネフローゼ症候群治療
大友 義之服部 元史藤永 周一郎高田 大赤司 俊二清水 俊明山城 雄一郎
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2005 年 18 巻 2 号 p. 81-84

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抄録

小児の微小変化型ネフローゼ症候群の病因としてT細胞を巡る免疫異常が想定されている。また,本症患児においてアレルギー性疾患の合併がしばしば経験され,治療のオプションとして抗アレルギー薬の使用が行われてきた。トシル酸スプラタスト(商品名:アイピーディ)は本邦で開発された抗アレルギー薬で,2001年9月より小児の気管支喘息の治療に使用されている。本剤はTh2細胞からのIL-4,IL-5の産生を抑制することにより抗アレルギー作用を発揮すると考えられている。Th2細胞の活性化が成人のネフローゼ症候群の病因に関与するという最近の知見に基づき,当科で加療中のアレルギー性疾患を有するステロイド依存性ネフローゼ症候群患児(以下,対象患児)にトシル酸スプラタスト(以下,IPD)を使用して,ネフローゼ症候群への治療効果を検討した。2002年9月以降,対象患児24例にIPD(6mg/kg/day,max 300mg/day)を開始し,1年以上観察を終了した13例(男児10例,女児3例,平均年齢9歳)を対象とした。IPD治療により,ネフローゼの再発回数は1年間に平均で1.54回から0.15回,プレドニン投与量も平均で0.19から0.04mg/kg/dayへと有意差をもって減少した。IPD併用による副作用は認められなかった。今後のさらなる薬効機序などの検討を待たれるところであるが,ステロイド依存性ネフローゼ症候群の治療の一つの選択肢として本剤の使用が期待される。

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© 2005 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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