日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
ドライウェイトの設定に心臓超音波検査による左室拡張末期径を用いた小児血液透析患者の1例
山澤 弘州村上 智明栃丸 博幸
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2006 年 19 巻 2 号 p. 156-160

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抄録
 症例は先天性ネフローゼ症候群の7歳,男児。2歳2ヵ月時に母をドナーとした生体腎移植を施行するも,間もなく感染およびタクロリムスによると思われるthrombotic microangiopathyにより移植腎摘出,泌尿器科にて血液透析による管理となった。それ以後胸部レントゲン写真上心拡大はなく,心臓超音波検査での左室拡張末期径は対正常値101%程度で,低血圧もなく4年ほど推移した。その間,成長に合わせドライウェイトを緩和していったが,最近1年ほどで心胸比も拡大し57%となったため,ドライウェイトを制限したところ,心胸比は大きく変化なかったにも関わらず透析低血圧が出現した。当科にて精査したところ,収縮能,収縮性,心拍出量は正常範囲に保たれているものの,左室拡張末期径が対正常値91%と縮小しており,低血圧は前負荷の不足によるものと考えられた。そこでドライウェイトを緩和したところ左室拡張末期径は対正常値98%へ拡大,透析低血圧も出現しなくなった。また,心胸比がさらに拡大するということもなかった。左室前負荷の評価は胸部レントゲン写真のみでは難しく,心臓超音波検査も組み合わせることが,ドライウェイトの設定に有用であると考えられた。
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© 2006 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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