抄録
治療の進歩により小児の悪性腫瘍疾患の予後は改善しているものの,経渦中に急性腎不全 (ARF) をしばしば合併し持続的腎代替療法 (continuous renal replacement therapy: CRRT) を要することが少なくない。われわれはARFのためCRRT (内訳:CHD 11例,CHDF 3例,CHF 1例)を施行した患児15例 (平均年齢:8.7歳,原疾患:急性リンパ性白血病5例,急性骨髄性白血病3例,神経芽腫5例,悪性リンパ腫2例) を生存群10例と死亡群5例に分けて比較検討した。両群間で年齢,体重,透析日数,透析前の尿量,GFR値,ヘモグロビン値,血小板数は有意差を認めなかった。一方,死亡群は生存群より有意に不全臓器数が多く (p<0.01),敗血症を合併し (p<0.05),白血球数が低値 (p<0.05) であることが判明した。CRRT中に血圧低下などの循環動態の変動で治療継続困難例はなかった。小児用の血液浄化装置,低容量の血液浄化器と血液回路の使用により循環動態の不安定な小児の血液腫瘍疾患児においても比較的安全に急性血液浄化療法は可能であった。ただし,白血球減少時に,敗血症による多臓器不全に伴ったARFの救命は困難と思われた。