抄録
多嚢胞性異形成腎 (Multicystic dysplastic kidney: MCDK) と早期に診断した9症例の臨床的解析を行った。診断時からの平均観察期間は40ヵ月 (3∼115ヵ月) だった。発見契機は,胎児エコー5例,新生児期腎エコー1例,3ヵ月検診時腎エコー3例であった。MCDK腎の完全退縮を2例に認め,1例は胎内退縮例と考えた。合併奇形としては腎盂尿管移行部狭窄を2例に認めた。合併奇形のない7例とPUJの合併を認める1例はいずれも対側腎の代償性肥大を呈しており,腎機能は良好だった。PUJを合併し尿路感染症を繰り返した1例は腎機能低下を呈した。MCDK腎が完全に退縮した症例は,発見の時期によってはsolitary kidneyとして取り扱われてきた可能性がある。今後,胎児エコーによる早期かつ正確な診断とその長期予後の検討が必要である。