抄録
肉眼的血尿を伴ったネフローゼ症候群の3歳男児例を経験した。
腎生検光顕所見では,メサンギウム細胞のびまん性増殖,基質の増加とともに,係蹄壁の肥厚がみられた。スパイク,二重化も一部に認められた。蛍光抗体法ではIgG,IgA,C3,Fibrinogenが係蹄壁に強く沈着していた。電顕では上皮下に多量の高電子密度沈着物を認めた。沈着物はメサンギウム領域や内皮下にもみられ,mesangial interpositionも一部に認められた。
二次性膜性腎症あるいは膜性増殖性腎炎 (MPGN) typeIIIの可能性が考えられたが,IgAの係蹄壁の沈着が強い点が典型的ではなかった。私たちは,この組織を,原発性腎炎のまれな病態「膜性増殖性腎炎 (typeIII) 様IgA関連糸球体腎炎」と考えた。