抄録
ネフローゼ症候群の治療に不可欠な副腎皮質ステロイド薬は1型糖尿病の高血糖を増悪させる。このため,両疾患が合併した際には高血糖と耐糖能の増悪に対して配慮が必要となる。
症例は5歳時に1型糖尿病を発症し,インスリン療法中であった。9歳時にネフローゼ症候群を発症し,プレドニゾロン (PSL) 内服を開始した。治療後より高血糖となったため厳密な血糖測定とインスリンの増量を行った。治療開始から2週間経過しても尿蛋白改善傾向はなく,シクロスポリン (CyA) を併用した。治療開始より4週間後に完全寛解となり,PSLを隔日投与とし,漸減,中止した。隔日投与中はPSL内服日のみ基礎インスリン量を増やした。PSL開始後のHbA1cは1か月後7.7%,2か月後7.8%であった。
早期の免疫抑制薬導入とPSL隔日投与中のインスリン投与量の調整を行うことで,ステロイドの早期減量と良好な血糖コントロールを得ることができた。