日本小児腎臓病学会雑誌
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25 巻, 1 号
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原著
  • 本多 貴実子, 秋岡 祐子, 菅原 典子, 上田 博章, 藤井 寛, 近本 裕子, 服部 元史
    2012 年 25 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     腎代替療法 (RRT) を開始した低・異形成腎14例を対象に,RRTの選択と開始時期について検討した。対象症例のRRTの開始時平均年齢は11.5±5.8歳,診断から開始までの平均期間は6.7±3.7年, 開始時平均eGFRは10.1±3.1ml/min/1.73m2で,RRT開始時まで尿量は保持され,血清電解質値はほぼ良好にコントロールされていた。RRTの内訳は先行的腎移植 (PEKT),透析が各7例で,PEKT群のRRT開始時eGFRは12.0±2.9ml/min/1.73m2で,透析群の8.6±2.3ml/min/1.73m2より有意に高かった。一方,透析群の7例中4例は直前の予期しない入院イベントを契機に透析が開始された。低・異形成腎は腎不全の進行スピードが一定であることから,十分な術前準備が可能で,PEKTの良い適応になることが示された。そして,腎移植を安全に施行するため,腎移植手術は比較的早い時期に設定されていることが示された。一方,RRTで透析を開始する場合には,無症候であってもeGFRが10ml/min/1.73m2前後になったら透析を開始するのが安全と思われた。
  • 後藤 美和, 二宮 誠, 上村 治, 松山 健, 伊藤 雄平, 幡谷 浩史, 伊藤 秀一, 山川 聡, 石川 智朗, 本田 雅敬
    2012 年 25 巻 1 号 p. 6-17
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     1973年度から学校検尿が導入され,2002年度から現在の「学校生活管理指導表」が広く使用されている。実際の管理区分は日本学校保健会の作成した「管理区分の目安」を利用して決定し,「学校生活管理指導表」に記入しているが,制限が最近のガイドラインやエビデンスにそぐわないものがあり,またコメントで対応していることが多いなどの問題点がある。一方,管理区分の活用については腎臓病専門医においても一定の見解が得られておらず,現場の医師の判断に依存している部分も少なくない。
     今回,「新・学校検尿のすべて」の改訂にあたり「管理区分の目安」の見直しを行うことになった。そこで,現在,小児腎臓病専門医により,どのような運動管理が行われているかについて小児腎臓病学会評議員にアンケートを用いて調査を行った。その結果,管理区分の選択は小児腎臓病専門医の間でもかなり異なっていたが,「管理区分の目安」と実際に行われている管理の間には大きく隔たりがあり,目安の変更が必要なことが示された。また「学校生活管理指導表」にコメントを用いて対応していることも多く,現在の管理指導表が使用に適していないと考えられた。
総説
  • 山川 聡, 二宮 誠, 石川 智朗, 後藤 美和, 上村 治, 本田 雅敬
    2012 年 25 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     運動が身体的運動能力の向上やQOL (quality of life: 生活の質) の改善をもたらすのは明らかである。しかし,慢性腎臓病 (chronic kidney disease: CKD) を持つ患者においては,運動により蛋白尿や腎機能が悪化するのではないかという懸念から,従来から安静を基本とするスタイルがとられてきた。最近になってCKDに運動制限をむやみに行うべきではないという風潮に変わってきているが,CKDにおいて運動が腎疾患を悪化させるのか,それとも逆に腎保護作用があるのかはいままで科学的根拠をもって明らかにはされていない。本稿ではCKDにおける運動制限についての文献的レビューを行いエビデンスを検討した。運動がCKDの長期予後を悪化させるとする報告はな,くむしろ運動は蛋白尿や腎機能を悪化させることなく運動耐用能を改善し,患者のQOLを上げることが比較的高いエビデンスをもって示された。安静・運動制限は特に小児において肉体や精神の健全な発育を阻害しうるので,不必要な運動制限は行われるべきではない。
  • 木全 貴久, 蓮井 正史, 北尾 哲也, 山内 壮作, 下 智比古, 田中 幸代, 辻 章志, 金子 一成
    2012 年 25 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     近年,ステロイド依存性や頻回再発型のネフローゼ症候群に対する,リツキシマブ治療の有効性が相次いで報告され,難治性ネフローゼ症候群に対する新規治療薬として期待されているが,その投与法は確立していない。筆者らは「ネフローゼ症候群に対してリツキシマブを投与すると,末梢血B細胞は,平均100日間枯渇化するが,B細胞数の回復とともにネフローゼ症候群が再発する」との報告に基づいて,「リツキシマブ投与後3~4か月のB細胞数回復期に追加投与を行い,B細胞数を10個/μl以下に維持すれば,長期寛解を維持できるのではないか」と考え,リツキシマブ375mg/m2 (最大500mg) を3か月毎に4回反復投与する,という治療法の有効性と安全性の検討を行っている。本論文ではこのリツキシマブ反復投与法の自験例を紹介するとともに,難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ治療の文献的レビューを行う。
症例報告
  • 詫間 章俊, 阿部 祥英, 冨家 俊弥, 日比野 聡, 星野 顕宏, 齋藤 多賀子, 三川 武志, 櫻井 俊輔, 渡邉 修一郎, 佐藤 均, ...
    2012 年 25 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を発症した3歳女児の治療に免疫抑制薬,ミゾリビン (MZR) を9.5mg/kg/日で投与したが臨床効果が得られず,最高血中濃度 (Cmax) も1.07μg/mlと低値であった。その要因を検討した結果,見かけ上の分布容積 (Vd/F) は5.97l/kg,尿中排泄率 (fu) は17.4%であり,真の分布容積 (Vd) は1.04l/kgであることが判明した。Vd値はMZRが水溶性薬物であることと矛盾せず,MZRの吸収不良が有効な血中濃度に到達しなかった要因と判断された。MZRのfuは生体内利用率あるいは吸収率に相当するパラメータと考えられ,fuが小さい時はVd/Fが著しく大きく算出される。本症例のようにVd/Fが高値あるいはCmaxやfuが低値の場合にはMZRの吸収不良を背景に高用量のMZRでも有効血中濃度を得られない可能性が示唆された。
  • 急性血液浄化療法導入に関する考察
    伊東 幸恵, 中島 泰志
    2012 年 25 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     下痢に伴う溶血性尿毒症症候群 (以下,D+HUS) の急性期においては,しばしば高度な腎機能障害に対する血液浄化療法を必要とする。したがって,急性血液浄化療法導入に関する判断が,本症の治療で最も重要な局面ともなり得る。本邦におけるガイドラインによれば,乏尿が急性血液浄化療法導入の適応基準の一つとされている。今回われわれは,顕著な乏尿症状を呈したにもかかわらず血液浄化療法を回避できた症例を経験した。
     症例は5歳男児,発熱と血便・下痢を主訴に前医受診し,腎機能障害,血小板減少を認め,溶血性尿毒症症候群と診断,乏尿の状態が持続していたため当院転院となった。来院時無尿であったが,電解質異常・溢水の所見は認めなかったため,血液浄化療法を導入せずに保存的管理を継続した。入院5日目より尿量増加傾向が明らかとなり,退院まで治療管理可能であった。厳重な全身管理・監視や,緊急時の迅速な血液浄化療法導入が可能な医療体制の下においては,乏尿を来したD+HUS症例であっても血液浄化療法を回避できる可能性もある。近年報告が散見される急性腎障害をともなう重症患者に対する急性血液浄化導入のタイミングに関する集中治療領域における議論も含めて報告する。
  • 西山 慶, 河野 敦子, 島袋 渡, 郭 義胤
    2012 年 25 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     ネフローゼ症候群の治療に不可欠な副腎皮質ステロイド薬は1型糖尿病の高血糖を増悪させる。このため,両疾患が合併した際には高血糖と耐糖能の増悪に対して配慮が必要となる。
     症例は5歳時に1型糖尿病を発症し,インスリン療法中であった。9歳時にネフローゼ症候群を発症し,プレドニゾロン (PSL) 内服を開始した。治療後より高血糖となったため厳密な血糖測定とインスリンの増量を行った。治療開始から2週間経過しても尿蛋白改善傾向はなく,シクロスポリン (CyA) を併用した。治療開始より4週間後に完全寛解となり,PSLを隔日投与とし,漸減,中止した。隔日投与中はPSL内服日のみ基礎インスリン量を増やした。PSL開始後のHbA1cは1か月後7.7%,2か月後7.8%であった。
     早期の免疫抑制薬導入とPSL隔日投与中のインスリン投与量の調整を行うことで,ステロイドの早期減量と良好な血糖コントロールを得ることができた。
  • 平本 龍吾, 篠塚 俊介, 藤巻 元, 松本 真輔, 江口 広宣, 秋草 文四郎
    2012 年 25 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     リツキシマブ (Rit) 治療後に再発した難治性ネフローゼ症候群 (免役抑制剤使用下でのステロイド依存性頻回再発型,組織は微小変化型) の2症例に対して,シクロスポリン (CyA) とミゾリビン (MZR) 併用療法の再開が奏効したので報告する。症例1は2歳初発の10歳男児,症例2は6歳初発の19歳男性。それぞれ計16回と43回再発するためRitを4回投与。症例1は5か月後,症例2は8か月後より再発し始め,併用療法再開したところ寛解維持。どちらもRit使用前にはCyA・MZR併用療法下でも再発反復していたが,Rit療法後には併用療法により1年間以上の寛解維持が可能であった。このことよりRit療法後に,CyA・MZR併用療法への感受性が変化する可能性が示唆された。MZRにCyA腎症発症抑制作用があることから,Rit療法後の再発コントロールには,CyA・MZR併用療法再開も有効な選択の1つになりうる。
  • 思春期における腎移植後患児のNonadherenceについて
    鈴木 俊明, 池住 洋平, 唐澤 環, 長谷川 博也, 中川 由紀, 斉藤 和英, 高橋 公太, 石原 俊二, 原 正則, 柳原 俊雄, 内 ...
    2012 年 25 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     症例は13歳男子。5歳時にIgA腎症から末期腎不全に至り,2年間の腹膜透析を経て,7歳で献腎移植を受けた。11歳の春から移植腎機能の低下と尿蛋白の増加あり,その1年後に急激な血清クレアチニン値 (Cre値) の上昇を認めて入院した。腎生検で抗体関連型拒絶の所見を認め,Nonadherenceが主因と診断した。本例では,10代という年齢とともに,移植後に父親が亡くなったことや母が再婚したことなどの家庭環境の大きな変化がNonadherenceに影響したと考えられた。
    当科でフォロー中の腎移植症例の内,現在の年齢が10~20歳の8例を対象に薬剤adherenceについて調査を施行した。結果,5例 (62.5%) が,この1か月間に薬を飲まなかったことがあると回答した。飲まなかった群は,移植後の年数が長く,移植腎機能が低い傾向にあった。
     Nonadherenceは,移植腎機能低下に直結する重要な問題であり,大きな環境の変化を経験しやすい思春期の移植患者を管理する上では常に気を付けなければいけない。医療者全員がこのことを認識し,継続的な教育とサポートが必要である。
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