抄録
腎移植レシピエントは多くの心血管疾患(cardio vascular disease: CVD)リスク因子を抱えており,CVDリスクを早期から適切に把握することは重要な事項である。本研究では小児期に腎移植を受けた若年成人レシピエントを対象に上腕-足首脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity: baPWV)を測定し,CVDリスクを検討した。33例(男女比:20/13,移植時年齢13.1±4.2歳,baPWV測定時年齢24.4±4.6歳)を対象とし,baPWVのカットオフ値は1400cm/sec.とした。その結果,33例中8例(24.2%)はbaPWVが1400cm/sec.を超えており,動脈壁が硬くCVDリスクが高い症例と判断された。baPWV高値群(>1400cm/sec.)はbaPWV低値群(≤1400cm/sec.)と比較して,血圧,シクロスポリン服用頻度,移植後経過年数,そして血清ホモシステイン値は有意に高値を示し,またeGFRは有意に低値であった。若年成人腎移植レシピエントにおいても,CVDリスクを早期から適切に把握し,関連する諸因子を適正に管理することの重要性が示された。