日本小児腎臓病学会雑誌
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25 巻, 2 号
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原著
  • 清水 正樹, 井上 なつみ, 徳久 優子, 石川 さやか, 上野 和之, 中山 祐子, 横山 忠史, 黒田 文人, 金田 尚, 太田 和秀, ...
    2012 年 25 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     EHEC感染症21例を対象として,血清中の炎症性サイトカイン濃度(neopterin,IL-6,IL-8,TNF-α,可溶性TNF受容体(sTNFR)IおよびII)を測定し,既知の重症化予測因子と比較検討した。軽症例と比較し重症例では,TNF-α以外の炎症性サイトカインの血清中濃度が有意に増加していた。TNF-αは,両群間で有意の上昇は認めなかったが,重症群の6例に上昇を認め,これらは全例急性脳症合併例であった。重症例では,出血性腸炎(HC)の時期にはこれらの炎症性サイトカインの上昇はみられず,血小板値が減少し始める溶血性尿毒症症候群(HUS)の診断前日から急速に著しい高サイトカイン血症が生じていた。一方軽症例では,経過中炎症性サイトカインの増加は認められなかった。重症例では,HC発症からHUS診断までに白血球数とLDH値が有意に大きく増加していた。これらの結果から,HUSの重症化には炎症性サイトカインが深く関与し,重症化病態はHUS発症後急速に完成することが判明した。血清サイトカイン濃度はEHEC感染症およびHUSの病勢把握,治療効果判定に有用な指標となると思われた。
  • 江口 広宣, 山村 智彦, 松本 真輔, 平本 龍吾, 秋草 文四郎
    2012 年 25 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     高度蛋白尿を呈するも,ステロイド剤やACEI,ARBを含む多剤併用療法に良好な反応を示した紫斑病性腎炎の小児10例について検討した。8例は1.0g/day/m2以上の蛋白尿もしくは早朝尿蛋白/尿クレアチニン比1.0 g/g以上が少なくとも1~2か月程度続き,残りの2例は発症時すでに低アルブミン血症(血清アルブミン3.0g/dL未満)に陥っていた。いずれの症例も治療開始後は比較的すみやかに蛋白尿が消失した。再評価の腎生検では病理組織の改善も確認され,ステロイド剤を中止してから少なくとも18か月間以上の経過観察を続けたが,尿所見が再増悪する例はなかった。高度蛋白尿を呈する紫斑病性腎炎症例でも,ステロイド剤やACEI,ARBを含む多剤併用療法により改善を期待しうると思われた。
  • 濱谷 亮子, 大津 美紀, 菅原 典子, 石塚 喜世伸, 近本 裕子, 秋岡 祐子, 服部 元史
    2012 年 25 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     腎移植レシピエントは多くの心血管疾患(cardio vascular disease: CVD)リスク因子を抱えており,CVDリスクを早期から適切に把握することは重要な事項である。本研究では小児期に腎移植を受けた若年成人レシピエントを対象に上腕-足首脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity: baPWV)を測定し,CVDリスクを検討した。33例(男女比:20/13,移植時年齢13.1±4.2歳,baPWV測定時年齢24.4±4.6歳)を対象とし,baPWVのカットオフ値は1400cm/sec.とした。その結果,33例中8例(24.2%)はbaPWVが1400cm/sec.を超えており,動脈壁が硬くCVDリスクが高い症例と判断された。baPWV高値群(>1400cm/sec.)はbaPWV低値群(≤1400cm/sec.)と比較して,血圧,シクロスポリン服用頻度,移植後経過年数,そして血清ホモシステイン値は有意に高値を示し,またeGFRは有意に低値であった。若年成人腎移植レシピエントにおいても,CVDリスクを早期から適切に把握し,関連する諸因子を適正に管理することの重要性が示された。
総説
  • 漆原 真樹
    2012 年 25 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     腎臓内におけるレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system: RAS)の活性化は高血圧だけでなく腎障害の進展にも深く関与している。アンジオテンシノーゲンはRASの唯一の基質であり肝臓だけでなく腎臓でも産生されている。近年,動物モデルや培養細胞による研究で腎臓内におけるアンジオテンシノーゲンが高血圧や腎障害の発症進展機序に関与していることが証明され,尿中に排泄されたアンジオテンシノーゲンが腎臓で発現しているアンジオテンシノーゲンを反映し,腎内RASの活性化を示していることが明らかとなった。そして,ヒトにおける研究でも成人の高血圧,慢性腎臓病患者,小児の慢性糸球体腎炎や1型糖尿病患者において尿中のアンジオテンシノーゲン排泄量は増加しており,腎内RAS活性化の優れた指標であった。尿中アンジオテンシノーゲンは腎障害における新たなバイオマーカーになると期待できる。
  • 中西 浩一, 吉川 徳茂
    2012 年 25 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     繊毛は細胞表面から突出する小器官であり,気管などに存在する運動性の繊毛と,ほぼすべての細胞に存在する非運動性の一次繊毛が存在する。一次繊毛の役割は長らく不明であったが,近年,一次繊毛とその関連構造物の遺伝子変異により腎嚢胞,肝臓・胆管異常,内臓逆位,多指症,脳梁低形成,認知障害,網膜色素変性症,頭蓋・骨格異常,糖尿病など多岐にわたる異常を生じることが明らかになった。これら一群の繊毛機能不全疾病を称して繊毛病(ciliopathy)と呼ぶ。腎徴候を呈する繊毛病としては,常染色体優性および劣性多発性嚢胞腎,ネフロン癆,Joubert syndrome,Bardet-Biedl syndrome,Meckel-Gruber syndromeなどがある。繊毛病の多くは腎嚢胞を合併するため,腎嚢胞は繊毛病の診断上重要である。
  • 南学 正臣
    2012 年 25 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     腎臓は酸素消費が多く,更に動静脈シャントのため酸素の取り込み効率が悪いため,低酸素状態になりやすい臓器であり,様々の要因によって引き起こされる尿細管間質の慢性低酸素が腎臓病のfinal common pathwayとして注目されている。これまで,様々な方法により腎臓病の実験動物モデルで,腎臓の低酸素が証明されてきた。更に,最近ではBOLD-MRIにより,ヒトの腎臓病において腎臓の低酸素が証明されている。生体は低酸素に対する防御機構として,転写調節因子hypoxia inducible factor(HIF)を備えている。現在我々が日常臨床で行っている腎臓病治療法の多くは,腎臓の低酸素改善効果を持っているが,HIF活性化薬の臨床応用が期待されている。低酸素はヒストン修飾を調節して,長期的な遺伝子発現の変化を引き起こす可能性があり,低酸素によるエピジェネティックな変化は重要な検討課題となっている。
  • 忍頂寺 毅史, 貝藤 裕史, 飯島 一誠
    2012 年 25 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     小児特発性ネフローゼ症候群の病因は諸説あるが,T細胞が産生する液性因子の関与が以前より有力である。近年,T細胞の中でも制御性T細胞が自己免疫疾患をはじめとしたさまざまな疾患の発症と関連していることが明らかとなってきた。我々は制御性T細胞が関与したものと考えられる小児特発性ネフローゼ症候群症例を2例経験した。近年,文献的にも制御性T細胞のネフローゼ症候群への関与を示唆する報告が散見されるが,これらの知見はネフローゼ症候群の病態解明の一助として非常に興味深い。
  • 渡邊 常樹, 仲川 真由, 伊藤 亮, 藤永 周一郎
    2012 年 25 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     近年ステロイド依存性ネフローゼ症候群(Steroid-dependent nephrotic syndrome: SDNS)に対するリツキシマブ(Rituximab: RTX)の有効性を示した報告が増加している。しかし,その単独での再発抑制効果は一過性であり,B細胞の回復とともに多くが再発することも知られている。さらにRTXには,他の免疫抑制剤と異なり致死的な副作用の報告があるため,可能な限り投与回数を減らす工夫が必要である。近年,RTX投与後の維持療法として,シクロスポリン(Cyclosporine: CsA)またはミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate mofetil: MMF)を継続使用することで,B細胞の回復後も長期間再発を抑制できたとの報告がなされている。自験例の両者の比較において,CsA群はRTX投与前1年間の再発回数がMMF群より有意に多く重症であったが,研究期間中の無再発率は逆に有意に高率であった。さらに,CsA群はRTX前と比較して有意にCsA投与量が減少しており薬剤感受性の改善が示唆された。したがって,CsA抵抗性の難治SDNSに対しては早期にRTXを導入することで再発回数の減少のみならず,CsAの投与量も減量可能になるため慢性腎障害の発症リスクを抑え得ると考えられた。
症例報告
  • 山田 拓司, 後藤 芳充, 畔柳 佳幸, 田中 一樹
    2012 年 25 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     症例は6歳の女児。4歳8か月時,肉眼的血尿,蛋白尿,腎機能障害のため入院となった。C3,C4は正常,ANCAや抗GBM抗体は陰性であり,光顕上尿細管間質障害を伴う半月体形成性糸球体腎炎像を呈し,蛍光抗体法では糸球体係蹄壁へC3のみ沈着していたこと,などから特発性半月体形成性糸球体腎炎と診断した。一時的に血液透析が必要となったが,ステロイドパルス療法により腎機能や尿所見は徐々に改善し,カクテル療法に移行した。5歳11か月時の腎生検上では,活動病変は認めず,プレドニソロン(PSL)を中止した。しかし4か月後よりC3優位の低補体血症を伴う尿異常が再出現し,保存的治療でも改善がないため,3回目の腎生検を施行した。初回と同様,重度な分節性壊死性腎炎像であったが,Humpも認め,初回腎生検の電顕上基底膜内に高電子密度沈着物が観察されておりdense deposit disease(DDD)と診断した。初発時同様ステロイドパルス療法に非常によく反応した。現在再発予防としてPSL,ミゾリビン(MZB)を,腎保護作用としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を追加し経過観察中である。
  • 江口 広宣, 秋草 文四郎, 平本 龍吾, 松本 真輔
    2012 年 25 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     腎組織の一部に虚脱性糸球体と尿細管間質病変(尿円柱を有する尿細管,間質の線維化と炎症細胞浸潤)を伴ったステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の1男児例を経験した。当初はプレドニゾロン投与量を2mg/kg/連日から減量することが困難であり治療に難渋した。シクロスポリンの併用を開始してからは寛解を維持しつつステロイド剤を減量し得た。シクロスポリン併用開始から約1年後に行った2回目の腎生検では特に異常を認めず,微少変化型と診断した。その後ステロイド剤を中止し,現在はシクロスポリン単剤で寛解を維持している。
海外論文紹介
  • Kristin J. Bergsland, Fredric L. Coe, Mark D. White, Michael J. Erhard ...
    2012 年 25 巻 2 号 p. 158-159
    発行日: 2012/11/30
    公開日: 2012/12/22
    ジャーナル フリー
     小児での腎カルシウム結石症の発症率は増加を示しており,再発傾向もみられる。小児での結石症の発症頻度は成人に比べて低いが,その成因については十分にはわかっていない。それゆえ,成人に対する治療法も小児には適さない。小児の結石形成における代謝異常をより理解するために,6~17歳の有結石者129名,対する有結石者の同胞がいる結石を有していない105名,および家族歴で結石を認めない健常小児183名での24時間尿生化学検査と結晶化の特性について比較検討した。カルシウム結石形成の主たる危険因子は高カルシウム尿症であった。有結石者群ではシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムの過飽和を伴った尿中カルシウム排泄量が多く,また,リン酸カルシウムでの過飽和と準安定域上限の幅が減少しており,リン酸カルシウムの結晶化の危険性を高めていた。小児では,成人の有結石者に認められる高シュウ酸尿症,低クエン酸尿症,尿pHの異常,尿量低下のような尿生化学異常所見は認められなかった。このように,高カルシウム尿症とリン酸カルシウムの過飽和と準安定域上限の幅の減少が,結石の決定的な危険因子であった。これらのことから,カルシウム結石を有する小児において,高カルシウム尿症の管理が重要であることが強調される。
各地方会の二次抄録
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