日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
Print ISSN : 0915-2245
ISSN-L : 0915-2245
総説
難治性ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ単回投与後のシクロスポリン / ミコフェノール酸モフェチルによる寛解維持効果
渡邊 常樹仲川 真由伊藤 亮藤永 周一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 25 巻 2 号 p. 142-146

詳細
抄録

 近年ステロイド依存性ネフローゼ症候群(Steroid-dependent nephrotic syndrome: SDNS)に対するリツキシマブ(Rituximab: RTX)の有効性を示した報告が増加している。しかし,その単独での再発抑制効果は一過性であり,B細胞の回復とともに多くが再発することも知られている。さらにRTXには,他の免疫抑制剤と異なり致死的な副作用の報告があるため,可能な限り投与回数を減らす工夫が必要である。近年,RTX投与後の維持療法として,シクロスポリン(Cyclosporine: CsA)またはミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate mofetil: MMF)を継続使用することで,B細胞の回復後も長期間再発を抑制できたとの報告がなされている。自験例の両者の比較において,CsA群はRTX投与前1年間の再発回数がMMF群より有意に多く重症であったが,研究期間中の無再発率は逆に有意に高率であった。さらに,CsA群はRTX前と比較して有意にCsA投与量が減少しており薬剤感受性の改善が示唆された。したがって,CsA抵抗性の難治SDNSに対しては早期にRTXを導入することで再発回数の減少のみならず,CsAの投与量も減量可能になるため慢性腎障害の発症リスクを抑え得ると考えられた。

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top