抄録
ネフローゼ症候群,遷延する蛋白尿,反復する肉眼的血尿発作など,溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)としては非典型的な経過をたどった症例を経験した。症例は11 歳男児。一過性の肉眼的血尿発作の3 か月後に溶連菌感染に伴う肉眼的血尿・蛋白尿を認めた。低補体血症はなく,慢性腎炎の急性増悪と考えたが,感染から約3週間後に,肉眼的血尿・ネフローゼ症候群・低補体血症を伴う急性糸球体腎炎を発症した。初回腎生検では,高度な炎症所見を伴うPSAGN と考えられ,NAPlr も陽性であった。ステロイドパルス療法を含む多剤併用療法を実施したが,顕微鏡的血尿・蛋白尿は遷延した。治療開始から5 か月後の病理所見では,メサンギウム増殖が主体でIgA は陰性であった。発症から9 か月で蛋白尿が消失し,約1 年で血尿も消失したため,治療を終了したが,以後も再燃はない。臨床経過からはIgA 腎症とPSAGN の合併,病理学的見地からはPSAGN の重症型が疑われたが,複雑な経過を一元的に説明することは困難であった。