日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
慢性糸球体腎炎の発症病態からみた治療戦略
川崎 幸彦
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2014 年 27 巻 2 号 p. 96-104

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抄録

小児期に発症しやすい慢性糸球体腎炎には,IgA 腎症,紫斑病性腎炎,巣状糸球体腎炎,膜性増殖性糸球体腎炎やループス腎炎などが挙げられる。近年,IgA 腎症や紫斑病性腎炎の発症にはIgA1 ヒンジ部の糖鎖不全を有する患児に,抗原刺激が加わり活性化されたB 細胞から産生されたIgA1 糖鎖不全免疫複合体が,補体,マクロファージ,メサンギウム細胞の活性化などを誘導し,炎症惹起や糸球体障害進展に関与するといわれている。これらの免疫応答を制御するために,患者の重症度に応じた層別化した治療が選択されている。重症例に対してはステロイド薬,免疫抑制薬,抗凝固・線溶薬やアンジオテンシン酵素合成阻害薬を併用した多剤併用療法および血漿交換やLDL アフェレーシスなどの血液浄化療法が施行されるようになり,各種腎炎の予後が改善し透析導入が回避されてきている。さらに成長発達期であることを考慮した副作用を最小限に抑えた治療が選択されている。今後,より最適な治療法を確立するためには,さらなる前向き試験での検討が不可欠である。

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© 2014 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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