日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
溶血性尿毒症症候群におけるチトクロームc の検討
田中 悦子此元 隆雄今村 秀明織田 真悠子阪口 嘉美中原 彰彦布井 博幸
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2015 年 28 巻 1 号 p. 68-74

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抄録

要旨 溶血性尿毒症症候群(HUS)の病態形成にアポトーシスが関与する可能性が報告されている。チトクロームc はアポトーシスの指標であり急性脳症で上昇するが,HUSに合併した脳症やHUS での検討はない。我々は,腸管出血性大腸菌感染(EHEC)O-157 によるHUS に脳症を合併した症例を経験した。本症例のチトクロームc は高値であり,脳症症状に相関して推移した。過去に当科で経験したEHEC 感染によるHUS9 症例(うち2 症例は脳症合併)の検討では,チトクロームc は脳症合併例あるいはeGFR 20 mℓ/min/1.73 m2以下の症例で高い傾向を認め,脳症の病勢に相関して変動した。以上より,チトクロームc は脳症合併もしくは透析導入を要する重症HUS の指標となり,重症化の病態にアポトーシスが関与する可能性が示唆された。チトクロームc がHUS 発症の指標となりうるかを含め,今後の検討が必要である。

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© 2015 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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