抄録
WT1 遺伝子変異は,瀰漫性メサンギウム硬化(diffuse mesangial sclerosis: DMS),巣状糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis: FSGS)等の原因となる。特にDMS は乳児期早期に発症し,薬剤抵抗性で早期に腎不全に至り透析・腎移植を必要とすることが多い。シクロスポリンA(cyclosporin A: CsA)により,2 歳時現在,不完全寛解と腎機能を維持しているDMS 症例を経験した。WT1 遺伝子解析にて,既に腎症の原因として報告されているヘテロ接合性変異を2 つ有することが判明し,このようなケースは第1 例目となる。CsA を腎機能障害を認める前に投与開始することは,WT1 遺伝子変異を伴うDMS に対して有効であり,完全寛解までに至らなくとも腎症・腎不全の進行を遅らせ,先行的腎移植を視野に置いた計画的治療を可能にし得る。