2016 年 29 巻 2 号 p. 109-113
紫斑病性腎炎(HSPN) はHenoch-Schönlein 紫斑病(HSP)に伴う腎炎で,小児腎臓科医が診療する最も頻度の高い疾患の一つである。数%が末期腎不全に至るとされる一方で,腎炎を発症しても自然治癒する例があることも知られている。治療方針に確固たるエビデンスがないため,施設や症例ごとに治療法や治療開始のタイミングが異なるのが現状である。当院ではこれまで一貫して,血清アルブミン値と病理組織学的所見に基づき治療方針を決定し,免疫抑制剤などによる濃厚な治療の対象をできるだけ限定するよう努めてきた。その後方視的解析の結果,アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)あるいはアンギオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)を使用することで,比較的重度なHSPN 症例でも良好な予後であることを明らかにした。ACE-I/ARB は,その効果と限界を理解したうえであればHSPN に対しても使用が可能である。