2016 年 29 巻 2 号 p. 102-108
近年,IgA 腎症の発症にはIgA1 ヒンジ部の糖鎖不全の関与が示唆されている。抗原刺激により活性化されたB 細胞から産生されたIgA1 糖鎖不全免疫複合体が,メサンギウム細胞に沈着し,補体,マクロファージ,メサンギウム細胞を活性化し,炎症が惹起される。これらの免疫応答を制御するために,患者の重症度に応じた層別化した治療が選択されている。重症例に対してはステロイ薬,免疫抑制薬や抗凝固・線溶薬を併用した多剤併用療法が施行されるようになり,予後が改善している。一方,扁桃摘出+ステロイドパルス療法は,免疫抑制薬を使用せず,初期治療として多剤併用療法と同等の効果が期待される治療法であり,ステロイド抵抗症例や再燃例および腎移植後の再発例に対しても有効性が示されている。今後,患児が成長発達期であることを考慮した副作用を最小限に抑えた治療法を確立するため,多剤併用療法や扁桃摘出+ステロイドパルス療法による多施設共同前向き比較試験が必要である。