日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
薬剤性腎障害
稲垣 徹史
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2017 年 30 巻 2 号 p. 119-125

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抄録

薬剤性腎障害は薬剤の投与により新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害の悪化を認める場合と定義される。腎は血流量が多いこと,薬物の濃縮が行われること,尿細管で分泌が行われその過程で尿細管細胞内の薬物濃度が上昇することなどにより,薬剤性障害が起こりやすい臓器である。薬剤性腎障害の診断は一般的な血液,尿検査,画像検査などと共に薬剤反応性リンパ球刺激試験(drug induced lymphocyte stimulation test: DLST),尿中好酸球も含めて診断するが,薬剤性障害の診断基準に必ずしも当てはまらず,確定診断は困難である。予防や治療に特異的なものはなく,尿の濃縮を防ぐための輸液負荷,薬剤の減量などしかない。

腎障害を起こす薬剤には様々なものがあるが,小児科で遭遇することが多い抗菌剤,抗けいれん薬,抗腫瘍薬,降圧薬について症例を挙げながら解説する。また,当科で経験した薬物性腎障害を疑った症例の診断過程を提示する。薬剤性腎障害が疑われた患者においては,特に病歴の聴取が重要である。

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© 2017 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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