2018 年 31 巻 2 号 p. 151-154
当科で初回治療が行われ,1 年以上観察しえたネフローゼ症候群 (NS) 患児93 例 (初発年齢中央値5.2 歳,観察期間6.3 年) において,学校検尿などから無症状で診断された8 例 (9%:無症候群) と全身浮腫で診断された85例 (91%:浮腫群) の2 群に分けて,臨床経過を比較検討した。初回ステロイド感受性だったのは無症候群7 例 (88%) ,浮腫群68 例 (80%) で,寛解までの日数は無症候群が浮腫群より有意に短かった (6.0 vs 10.0 日,p<0.01) 。また無症候群は浮腫群と比較して,診断から1 年間の再発回数は有意に少なく (0.25 vs 1.29 回/人・年,p<0.01) ,頻回再発/ステロイド依存性ネフローゼ症候群 (FR/SDNS) の移行例はなかった。初回ステロイド抵抗性のうち浮腫群の17 例は免疫抑制療法にて全例で完全寛解したが,無症候群1 例は WT-1 遺伝子変異が同定され高度蛋白尿が持続している。無症候性NS は一般的に予後良好であるが,ステロイド抵抗性を示した場合は,遺伝子検査を検討した方がよいと思われた。