2022 年 35 巻 2 号 p. 101-108
症例は6歳,男児.初発のネフローゼ症候群として,プレドニゾロン(PSL)の投与を開始し,2週間後より血圧が上昇傾向となったためカルシウム拮抗薬の投与を開始した.PSL投与開始から4週間後も完全寛解に至らず,腎生検を施行し,巣状分節性糸球体硬化症と病理診断した.腎生検の翌日,収縮期血圧120 mmHg台で,意識障害と左共同偏視があり,可逆性後頭葉白質脳症と診断した.ニカルジピンの持続投与を開始,ミダゾラムの持続静注に加えホスフェニトイン,フェノバルビタールを投与し,持続脳波モニタリングを行った.脳波上のてんかん発射は減少傾向となり,意識障害は回復,画像所見も改善した.アンジオテンシン変換酵素阻害薬を追加し,収縮期血圧100 mmHg前後となった.PSLは漸減中止し,U-TP/Cr 0.5 g/g·Cr以下で経過した.小児腎疾患患者ではPRES発症に関するリスク因子を多く有しており,著明な高血圧や免疫抑制剤の内服がなくても発症する場合があるため注意が必要である.