2022 年 35 巻 2 号 p. 109-115
RSウイルス感染を契機にネフローゼ状態で発見され,遺伝子解析でmulticentric carpotarsal osteolysis(MCTO)の診断に至った1例を経験した.症例は1歳11か月女児,既往歴に喉頭軟化症,短頭蓋症,嚥下障害,精神運動発達遅滞があった.肺炎・気管支喘息発作で入院した際,ネフローゼ症候群の診断基準を満たし,ステロイド治療を開始したが抵抗性であった.腎臓超音波検査でネフロン癆を疑い腎生検を行った.腎病理ではネフロン癆と2次性の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を疑う所見だったが,遺伝子解析でMAFBに既報のヘテロ接合性変異を認め,MCTOと診断した.X線検査ではMCTOに特徴的な骨溶解があり,整形外科的管理も開始した.外来管理中に急激に腎機能障害が進行し,3歳時に腹膜透析を導入した.ネフローゼ状態を呈したMCTOの報告はなく,早期の遺伝子診断が長期管理に有用であった.