2024 年 37 巻 p. 1-7
症例は8歳男児.胆道閉鎖症のため生後3か月で葛西手術,1歳7か月時に生体肝移植を施行され,肝移植後肝静脈狭窄症による門脈圧亢進症および蛋白漏出性胃腸症のため長期入院加療されていた.8歳時に高度蛋白尿および血尿が判明し腎生検を施行したところ,光顕にてメサンギウム増殖および基底膜の二重化,蛍光抗体法にてfull house pattern, 電顕にて上皮,内皮下への沈着とメサンギウム間入を認めた.抗核抗体は陰性で,発疹や発熱などの症状はなくループス腎炎は否定的であり,造影CTにて脾静脈の拡張と腹水を認めたため,肝静脈狭窄症に伴う門脈圧亢進による二次性膜性増殖性糸球体腎炎と診断した.蛋白尿はプレドニゾロンにて速やかに陰性化し,リシノプリルにて寛解を維持している.小児の肝移植後遠隔期において,免疫複合体型糸球体腎炎が発症する可能性がある.