2024 年 37 巻 p. 9-14
ARHGDIA遺伝子変異による先天性ネフローゼ症候群(CNS)は稀であり,報告症例もいまだ少ない.生後1か月でCNSを発症した男児が,急速に進行する腎機能障害を呈したため,当院転院後に血液透析を経て維持腹膜透析となった.ネフローゼ症候群(NS),腎機能障害以外に,小頭症や小顎症,斜視なども認めた.転院後てんかんも発症した.遺伝子検査にて ARHGDIA遺伝子のホモ接合性の新規のナンセンスバリアント(c.153C>G: (p.Tyr51*))を認めた.母親は同一変異のヘテロ接合体を有しており,片親ダイソミーと考えた.既報によると同遺伝子によるNSの発症様式はCNSと幼児期のステロイド抵抗性NSの2種類あり,いずれも末期腎不全に至る.合併症として知的障害,けいれん,視覚・聴覚障害があった.小頭症や小顎症は本症例のみだった. ARHGDIA遺伝子変異の表現型を明らかにするため,症例の集積が必要である.