2024 年 37 巻 p. 69-74
症例は8歳男児.夜尿が続くためX年に当科を受診した.外来尿,早朝尿ともに低張尿であり,多飲多尿も認めたため,尿崩症を疑って精査を行った.頭部MRIでトルコ鞍内に8 mm程度のラトケ囊胞を認め,水制限試験の結果から部分型中枢性尿崩症と診断した.デスモプレシン内服開始後,夜尿および多飲多尿は改善した.X+2年の頭部MRIでラトケ囊胞は消失していたが,内服は必要とする状態であった.X+2年半頃から怠薬しても尿量が増えなくなったので,内服を漸減しX+3年に中止した.ラトケ囊胞による尿崩症は,急性発症の一部で術後に症状の改善が見られた報告があるが,囊胞からの炎症波及で起こる慢性発症では病変摘出後も改善しないことが多いとされている.本症例はラトケ囊胞の自然退縮に伴って尿崩症が軽快し身長促進が見られたことから,囊胞による圧迫が症状の主な原因であったと考えられた.