抄録
乳児型多発性嚢胞腎に類似した腎病変を伴ったCaroli病 (先天性肝内胆管拡張症) の2歳男児例を経験した。腹部腫瘤を主訴にCaroli病と診断され,合併の知られる腎病変の精査のため紹介受診した。尿検査で血尿,濃縮力障害,尿細管障害を認め,クレアチニンクリアランスは75.3ml/min/1.73m2と軽度低下し,腎機能障害が認められた。腎エコーでは,両腎は腫大し,皮質髄質境界も不明瞭で高輝度を呈した。多数の小嚢胞の存在が示唆された。腎組織学的にも,集合管の著明な拡張による嚢胞形成と間質の線維化がみられ,これらの所見から乳児型多発性嚢胞腎が疑われた。肝線維症,門脈圧亢進症以外に,合併する腎病変も患児の予後を左右とすると考えられた。