日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
Print ISSN : 0915-2245
ISSN-L : 0915-2245
—原著—
ネフローゼ症候群の治療における多剤耐性遺伝子の関与
和田 尚弘高橋 昌里
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 8 巻 2 号 p. 159-162

詳細
抄録

 今回我々は,小児ネフローゼ症候群 (ネ症) 患児における多剤耐性遺伝子 (multidrug resistance (MDR) gene) の関与について,ネ疾患児13名 (無治療2例,副腎皮質ステロイド剤 (ス剤) 単独3例,シクロスポリン併用8例) の患児リンパ球よりmRNAを抽出し,RT-PCR法後,電気泳動し,デンシトメトリーにて検討した。結果は,無治療およびス剤単独例では,対照群 (1.87±0.09) と比較しMDR geneの発現が低い傾向にあった (1.46±0.22)。一方,シクロスポリン併用例は高い傾向にあり (1.99±0.57),2以上の症例が5例認められた。またシクロスポリン併用例ではMDR geneの発現量にばらつきがみられたが,CD4/8比と有意な相関が認められた。ネ症におけるシクロスポリンの作用機序には,その免疫抑制作用以外にス剤のリンパ球からの排泄に拮抗してステロイド作用を増強する可能性が示唆された。

著者関連情報
© 1995 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top