1996 年 9 巻 2 号 p. 203-205
T細胞は胸腺内でnegative selectionという自己反応性T細胞を除去する選択過程を経て分化成熟する。この胸腺内でのnegative selectionがいかに腎炎を含む臓器特異的自己免疫病の発症に関与しているのかについては明らかになっていない。また,糸球体腎炎及び間質性腎炎の中には本質的なT細胞の異常により引き起こされる病態も存在すると考えられる。そこで我々はそれらの腎炎の発症に胸腺内のnegative selectionが関わっているのか否かについて検討してきた。そして,自己免疫病モデルマウスの腎臓にnegative selectionを免れたT細胞が存在することを証明した。本稿ではそれらのT細胞による腎炎発症の関与の可能性について考察した。