抄録
要旨 ダウン症候群に排尿障害の合併率が高いことはあまり知られていない。今回,排尿障害を合併し急性尿閉をきたしたダウン症候群の2 例を報告する。症例1 と2 は2歳と6 歳の女児。両症例とも腎盂腎炎に罹患し,急性尿閉と急性腎障害をきたしたが,補液や導尿,抗菌薬治療によって改善した。しかし,症例1 では導尿が引き続き必要で,膀胱機能の異常を認めたことから排尿障害をもともと合併していたと考えられた。清潔間欠的導尿の導入により尿路感染の再発はなく,腎機能障害を認めなかった。一方,症例2 は3 歳時に水腎水尿管症と膀胱尿管逆流症が認められ,5 歳時には尿流動態検査で排尿障害の所見がみられていたが,清潔間欠的導尿の導入までに繰り返した尿路感染のため腎萎縮と腎機能障害をきたした。両症例は脊髄疾患や尿道狭窄はなく,non-neurogenic neurogenic bladder と診断した。ダウン症候群児では生後早期に排尿障害の症候の有無を観察することが重要と考えられた。