論文ID: oa.2020.0177
造血幹細胞移植(HSCT)による重篤な合併症の一つに腎障害がある.急性腎障害(AKI),慢性腎臓病(CKD)はともに生命予後や生活の質に大きな影響を及ぼす.今回,当院で血液疾患に対して同種造血幹細胞移植を受けた小児患者 72 例における HSCT 後の AKI と CKD の発症率およびリスク因子の特定を目的として,後方視的に検討を行った.AKI の発症率は 59.7% で,うち 2 例(4.7%)が腎代替療法を要した.HSCT 後の AKI のリスク因子は骨髄破壊的前処置(MAC) であった.一方,CKD の累積発症率は 18.2%で,うち 1 例(10%)がstage 3 であった.CKD のリスク因子は HSCT 後の AKI であった.小児の HSCT 後の AKI と CKD の発症率は決して低くない.HSCT 患者に対しては小児腎臓病医も積極的に介入し,AKI の予防と進行抑制に努めるべきである.