2026 年 4 巻 1 号 p. 2-10
【目的】肩関節を反復的に使用する作業者における筋骨格系障害(MSDs)は重大な問題である.本研究は,頭上作業時の上肢外骨格ロボットアシストスーツの影響を調査した.
【対象と方法】健常成人10名(男性5名,女性5名;平均年齢24.8±3.2歳)を対象に,外骨格ロボットアシストスーツ未装着(Control),装着のみ(AS-off),装着および肩関節アシストあり(AS-on)の3条件で頭上反復ビス打ち作業を実施した.作業時の関節角度,筋活動,主観的疲労度を評価した.
【結果】AS-on条件では,Controlと比較して三角筋中部で49.4%(p<0.01),上腕二頭筋で43.9%(p<0.05)筋活動が有意に低下し,また肩の主観的疲労感が25.6%軽減した.AS-on条件での作業中の体幹伸展角度は減少(p<0.05)していた.Control条件と比べて,AS-on条件では,女性の作業完遂率が向上していた.
【結論】外骨格型ロボットアシストスーツは身体的負荷を軽減し,作業効率向上やMSDsリスク低減に寄与する可能性がある.
Purpose: Musculoskeletal disorders (MSDs) are a major issue among individuals whose daily work involves frequent use of their shoulders. This study examined the effects of an upper-limb exoskeleton assist suit during overhead physical task.
Participants and Methods: Ten healthy adults (five men, five women; mean age 24.8 ± 3.2 yrs) performed a repetitive overhead screw-driving task under three conditions: with no exoskeleton (Control), wearing the exoskeleton with its shoulder assistance disabled (AS-off), and wearing the exoskeleton with shoulder assistance enabled (AS-on). We evaluated the joint angle, muscle activity, and subjective fatigue during the task.
Results: Compared to the control results, AS-on reduced the muscle activity of the middle deltoid by 49.4% (p<0.01) and the biceps brachii by 43.9% (p<0.05), and decreased subjective shoulder fatigue by 25.6%. Trunk extension angle during the task was significantly reduced in AS-on (p<0.05). Task completion rate improved in women under the AS-on condition compared to the control condition.
Conclusions: The upper-limb exoskeleton reduced the physical load and may improve work efficiency and lower the risk of developing an MSDs.
労働による筋骨格系障害(Musculoskeletal Disorders:MSDs)は,発生頻度が高く,慢性的な疼痛を引き起こすことが多い.特に肩痛は労働者において広く報告されている問題である1,2).労働者におけるMSDsは,病欠のみならず復職後の生産性低下をもたらし,組織の損失に直結することが報告されている3).また,頭上作業を含む非中立姿勢は肩障害リスクと関連し,欠勤・配置転換等のコスト増に結び付く4).肩関節に関連するMSDsにおいては,疼痛による休暇取得や理学療法を含む医療費の増加が報告されている5-7).また,肩関節手術後の職業復帰の状況をみると,完全復帰40%,軽作業へ転換による復帰37%,復帰困難33%となっており,完全復職が可能な者は半分にも満たない現状がある8).
本邦においては,腱板断裂に関連する職業として,農林漁業従事者,運輸・通信従事者,保安職業従事者,技能工・採掘・製造・建設労務作業者などが挙げられている9).肩関節痛の発生リスク因子としては,肩関節90°以上の屈曲作業の反復や機械振動が報告されている10).また,自動車組み立て作業者を対象とした研究では,作業時間の10%を肩関節90°以上に挙上する動作に費やすことで,肩障害のリスクが高まることが示されている4).このように肩関節挙上作業の過負荷は労働上のMSDsを引き起こし,勤務の継続や労働生産性に深刻な影響を及ぼすと考えられる.
一方,労働現場でMSDsの発生要素をすべて取り除くことは現実的に困難である.そこで近年,肩関節挙上作業による負担軽減を目的としたロボット機器の開発が進められている.中でも,上肢外骨格ロボットアシストスーツは,肩関節周囲筋の筋活動の軽減と労働作業効率の改善に有効であると報告されており11,12),重量物の運搬や頭上作業を援助する補助具として運用されている.一方で,肩の負荷低減に伴う腰背部への負荷移転(脊柱起立筋の筋活動の増加や推定脊柱負荷の増大)の可能性も指摘され13-15).筋電図・三次元動作解析・主観的疲労・作業パフォーマンスを同時に評価した統合的検証は乏しい.
本研究の目的は,頭上作業における上肢外骨格型ロボットアシストスーツの使用が,肩関節および周辺筋群に与える生体力学的影響を明らかにすることである.健常成人を対象とし,肩関節周囲の筋活動の変化,主観的疲労感,および作業効率を定量化するとともに,三次元動作解析から肩関節および腰部の機械的ストレス指標を抽出し,外骨格の有効性と潜在リスクを多角的に検討する.本研究は,頭上ビス打ち作業という実務に近い課題設定の下で,現場適用に資する生体力学的根拠の補強を目指す.
本研究には健常成人10名(男性5名,女性5名)が参加した.平均(標準偏差)は,年齢は男性26.8±3.7歳,女性は22.8±1.8歳,身長は男性169.0±5.1cm,女性155.6±5.3cm,体重は男性64.0±3.0kg,女性46.0±4.6kgであった.既往歴として腰痛2名,肩関節障害(腱板損傷)1名を認めたが,いずれも症状は緩解しており日常生活および就業に支障はなかった.肩関節障害に対する適格性は事前スクリーニング(肩痛Visual Analog Scaleは0/100,屈曲および外転可動域は左右ともに180°,三角筋・上腕二頭筋MMTは5,神経学的異常なし)で確認し,課題遂行への影響はないと判断した.なお,全員がビス打ち作業の経験を有していなかった.その他の基本情報を表1に示す.
| ID | 性別 |
年齢 (歳) |
身長 (cm) |
体重 (kg) |
腰痛 既往歴 |
肩関節障害 既往歴 |
利き手握力 (kg) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 男 | 23 | 167 | 63 | なし | なし | 37.5 |
| 2 | 男 | 24 | 179 | 63 | あり | なし | 42.3 |
| 3 | 男 | 32 | 167 | 67 | なし | なし | 47.7 |
| 4 | 男 | 26 | 168 | 60 | なし | あり | 43.0 |
| 5 | 男 | 29 | 164 | 67 | なし | なし | 38.4 |
| 6 | 女 | 22 | 153 | 43 | なし | なし | 23.4 |
| 7 | 女 | 22 | 160 | 52 | あり | なし | 24.3 |
| 8 | 女 | 22 | 161 | 50 | なし | なし | 25.0 |
| 9 | 女 | 26 | 156 | 43 | なし | なし | 27.4 |
| 10 | 女 | 22 | 148 | 42 | なし | なし | 22.9 |
本研究は厚生労働省の人を対象とする医学系研究に関する倫理指針および臨床研究に関する倫理指針を遵守し,対象者の保護に十分留意した.対象者には本研究の目的及び収集される資料の使用意図,同意の撤回の自由,有害事象発生の可能性について口頭及び書面で説明し,本人の自署による同意を得た後に実施した.また,研究実施施設である西大和リハビリテーション病院の倫理委員会の許可を得た上で実施した(承認番号33).
2.作業シミュレーション -反復ビス打ち作業- 1)作業環境効果検証に用いた上肢外骨格型ロボットアシストスーツにはTASK AR 1.0(株式会社ダイドー製)を使用した(図1–A).サイズは全長400 mm,全幅550 mm,全高480〜620 mmで,高さは8段階に調整可能であり,重量は3.9 kgであった.アシスト動力は,肩関節軸に内蔵されたガススプリングが上腕部のカフを力点として上方に引き上げる力を発揮する仕組みであり,腕の上昇に応じて一定のサポートを提供する.アシストレベル(AL)は任意に選択可能(AL1〜AL5)で,AL5が最も強いアシストとなる.推定トルク値はガススプリングの力と上腕部のカフまでの長さ(約15 cm)から算出した(表2).アシストの開始角度は約0〜90°の範囲で任意に設定可能で,約120°の範囲でアシスト可能である.

Control:外骨格型ロボットアシストスーツ未装着,AS-off:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストなし),
AS-on:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストあり),%MVC:等尺性最大筋力で正規化された筋電図.
実験環境は,実際の労働環境を模倣するため,縦1820 mm,横50 mm,幅50 mmの木材を用いて仮想ビス打ち作業環境を構築した(図1–B).肩痛のリスク因子とされる頭上作業を再現するため16),作業高さは被験者全員の頭部を超える1820 mmと設定した.木材には長さ1820 mmの範囲に20列(列間隔50 mm)を設定し,各列に2個ずつ計40個の穴をあけ,1列に横2つのビス打ちができるよう準備した.被験者はその穴にビスを打ち込んだ.各列の真下にはテープで印をつけ,作業位置を指定した.ビス打ちには質量1.4 kgの充電式ドライバドリル(M651DW,マキタ社製)を使用し,ビスは長さ32 mm,直径3.8 mmのものを用いた.
2)作業条件ビス打ち作業は利き手で実施した.課題実施前にビス打ち作業の練習と課題の説明を行い,練習時間は被験者が十分に慣れたと判断するまでとした.練習終了後には十分な休憩を挟み,主観的疲労感がないことを確認してから課題を開始した.ビス打ち課題は連続40個の穴に対して実施し,開始前に4つの作業ルールを説明した.1つ目は作業を迅速かつ正確に行いビスを完全に打ち込むこと,2つ目はドライバーがいったんビスから離れた場合は打ち直さず次列へ移行すること,3つ目は不完全な打ち込みを作業ミスとして計上すること,4つ目は列を移行する際に床のテープ印を進行方向へ一つ進めた位置で作業を再開することである.連続3回以上のミスが見られた場合,または被験者から中断希望があった場合は作業を中止した.実施条件は上肢外骨格型ロボットアシストスーツ未装着(Control),装着のみで肩関節アシストなし(AS-off),装着かつ肩関節アシストあり(AS-on)の3条件とした.AS-offは,装着重量・拘束の影響を検証するコントロール条件となる.AS-onではアシスト開始角度を約30°に設定し,ALは被験者が最も楽に腕を上げられ,かつ下げる動作に支障のないレベルを選択した.
研究デザインはランダム化クロスオーバーデザインを採用し,作業条件の実施順序は被験者ごとに表計算ソフト(Microsoft社,Microsoft Excel)のランダム関数を用いて決定した.各条件の間には3日間以上のウォッシュアウト期間を設け,作業学習による影響を最小限に抑えた(図1–C).作業完了後は,首,肩,腕,腰,足の主観的疲労感をBorg CR10 scale17)で評価した.また,各条件での作業や上肢外骨格型ロボットアシストスーツに関する感想も聴取した.
3)測定機器ビス打ち作業中の筋活動は,ワイヤレス筋電計(追坂電子社製,OE-WS123)を用いて表面筋電図(EMG)を記録した.測定筋はKimら12)の方法を参考に,三角筋前部(DA),三角筋中部(DM),僧帽筋(TM),上腕二頭筋(BB),上腕三頭筋(TB)とした.筋電計はSENIAM18)のガイドラインに基づき電極を貼付した.計測されたEMG信号は1 kHzでサンプリングし,LabChart 8(ADInstruments社製)により20〜500 Hzのバンドパスフィルタ処理および50 msでの二乗平均平方根処理を行った.また,各条件に先立ち等尺性最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)を測定した.測定者が最大抵抗を徒手的に加え,各筋が最大筋力を発揮するよう励ましながら測定した.MVCのピーク値で課題施行中に得られた筋電図を正規化(%MVC)した.MVCは各条件の作業前に毎回実施し,5分以上の休憩と主観的疲労感がないことを確認してから作業へ移行した.
関節角度の計測は,4カメラ(Acuity社製,Flex 13)による三次元動作解析システム(Acuity社製,Motive)を用い,100 Hzでサンプリングした.反射マーカーは利き手(ドライバー作業側)の肩峰,肘頭,橈骨茎状突起,大転子,大腿骨外側上顆,外果のランドマーク上に装着した.装着に際しては,被験者には薄手で伸縮性のない衣服の着用を指示し,マーカー装着部位の衣服のたるみを最小限にするよう調整した.また,各条件前にマーカー位置のずれがないことを目視で確認し,必要に応じて再装着を行った.得られたデータは動作解析ソフト(Acuity社製,SKYCOM)で解析し,肩関節屈曲・外転角度,肘関節角度,体幹伸展角度を算出した.さらに,40本のビス打ち作業における各関節の最大関節角度(Range of Motion:ROM)を算出した.
計測された %MVC と ROM は,1 本のビス打ち動作におけるピーク値を抽出し,各条件で得られた 40 回分から被験者ごとに条件別の平均値を算出した.本研究の目的は持続的頭上作業における外骨格型ロボットアシストスーツの総合的な負荷軽減効果を評価することであるため,作業全体を通じた代表値として40試行の平均値を採用した.この方法は,作業中の一時的な変動を含めた実作業環境における総合的な筋負荷を反映し,各条件の特性を適切に比較できると判断した.各条件は被験者内要因とし,等分散性をBartlett検定で確認した後,反復測定一元配置分散分析(repeated-measures ANOVA:RM-ANOVA)により条件間の筋活動および関節角度の差を検討した.なお,40試行という作業量は先行研究12)の15試行や他の類似研究11,19,20)と比較して十分な試行数であり,持続作業における条件効果を安定的に評価できる水準と判断した.作業中断例については,中断時点までの平均値を用いた.事後検定にはDunnett法による多重比較検定を用いて,Control条件との比較を行った. %MVC と主観的疲労度の関係については,スピアマン順位相関係数を用いて評価した.主観的疲労度はFriedman検定を用い,身体部位ごとに条件間で比較し,事後検定にはDunn検定による多重比較を行った.全ての統計解析は統計解析ソフト(GraphPad社製,GraphPad Prism 8)で行い,有意水準は5%とした.臨床的意義を評価するため,有意差のあった筋電図項目についてはCohen’s dによる効果量を算出した.Kimら12)の先行研究では,類似の外骨格ロボットアシストスーツが頭上作業時の肩周囲筋活動に大きな効果(η²=0.25〜0.33)を示しており,これを参考に本研究では効果量f = 0.5を想定した.G*Power 3.1.9.7を用いてRM-ANOVA(効果量f = 0.5,検出力80%,有意水準5%,測定間相関0.6)による事前サンプルサイズ計算を行い,必要サンプル数を7名と算出した.予備的研究として頑健性を確保し,潜在的な脱落者も考慮して,本研究では10名で実施した.
筋電図では,DMとBBのみ条件差を認め,AS-on(DM:18.7±13.2%;BB:10.6±5.2%)はControl(DM:36.9±20.2%;BB:18.9±11.7%)より低値であった(DM:p<0.01,Cohen’s d = 1.01,95%CI 0.3 – 1.7;BB:p<0.05,Cohen’s d = 0.55,95%CI 0.1 – 1.2).一方,DA,TB,TMの%MVCはいずれも条件間で有意差を認めなかった(図2).関節角度では,体幹伸展角度のみ条件差を認め,AS-on(23.4±5.2°)はControl(25.7±5.2°)より低値(p<0.05),AS-off(27.9±4.2°)よりも低値(p<0.05)であった.一方,肩関節屈曲・肩関節外転・肘関節角度はいずれも条件間で有意差を認めなかった(図3).主観的疲労度は肩のみ条件差を認め,AS-on(6.1±1.9)がControl(8.2±1.8)より低値であった(p<0.01).一方,首・腕・腰・足はいずれも条件間で有意差を認めなかった(図4).筋電図の結果で有意差のあったDM%MVC と肩の主観的疲労度の間に正の関連を認め(rs=0.50,p<0.01),BB%MVC と腕の主観的疲労度の間にも正の関連を認めた(rs=0.52,p<0.01)(図5).

Control:外骨格型ロボットアシストスーツ未装着,AS-off:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストなし),
AS-on:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストあり),%MVC:等尺性最大筋力で正規化された筋電図.

Control:外骨格型ロボットアシストスーツ未装着,AS-off:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストなし),
AS-on:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストあり),ROM:関節角度.

Control:外骨格型ロボットアシストスーツ未装着,AS-off:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストなし),
AS-on:外骨格型ロボットアシストスーツ装着(アシストあり).

%MVC:等尺性最大筋力で正規化された筋電図,DM:三角筋中部,BB:上腕二頭筋.
全被験者の作業結果を表3に示す.被験者ID7およびID8の2名には,作業が中断した条件があった.ID7はAS-on条件で40本の作業を完了したが,Control条件では17本,AS-off条件では10本であった.ID8はAS-off条件およびAS-on条件で40本作業を完了し,Control条件では33本であった.これらの作業中断は被験者の自己申告によるものであり,疲労により肩の挙上が困難となり,作業の継続が困難となったためである.
| ID | Control | AS-off | AS-on | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
作業本数 (本) |
作業ミス (回) |
作業遂行時間 (分) |
作業本数 (本) |
作業ミス (回) |
作業遂行時間 (分) |
作業本数 (本) |
作業ミス (回) |
作業遂行時間 (分) |
|
| 1 | 40 | 0 | 5.1 | 40 | 0 | 4.8 | 40 | 0 | 4.0 |
| 2 | 40 | 0 | 4.6 | 40 | 0 | 3.9 | 40 | 0 | 3.0 |
| 3 | 40 | 0 | 5.9 | 40 | 0 | 4.9 | 40 | 0 | 4.1 |
| 4 | 40 | 0 | 6.1 | 40 | 0 | 8.1 | 40 | 0 | 6.4 |
| 5 | 40 | 0 | 5.9 | 40 | 0 | 4.9 | 40 | 0 | 5.0 |
| 6 | 40 | 0 | 7.1 | 40 | 0 | 5.1 | 40 | 2 | 5.3 |
| 7 | 17 | 0 | 3.3 | 10 | 0 | 2.5 | 40 | 0 | 8.6 |
| 8 | 33 | 0 | 8.0 | 40 | 0 | 8 | 40 | 0 | 6.1 |
| 9 | 40 | 0 | 7.4 | 40 | 0 | 5.9 | 40 | 0 | 8.9 |
| 10 | 40 | 6 | 8 | 40 | 0 | 6.8 | 40 | 0 | 6.5 |
本研究では,外骨格型ロボットアシストスーツが頭上作業における作業パフォーマンスと疲労度に及ぼす影響を,三次元動作解析および筋電図測定を用いて肩や腕の筋活動を定量的に評価した.
肩関節屈曲に関与するDMおよびBBの%MVCが,それぞれControl条件と比較して有意に減少した.DMはControl比で相対低下率約49%(差18.2),BBは相対低下率約44%(差8.3)を示した.DAにおいても有意差は認めなかったが,AS-on条件で筋活動が減少する傾向にあった.外骨格型ロボットアシストスーツによって肩筋活動を最大45%低下させると報告もあり12),本研究の結果はその範囲内に位置づけられる.
肩の主観的疲労度はAS-on条件でControl条件と比較して25.6%低下した.この主観的疲労度の軽減は,前述された筋活動の低減と相関関係を認めており,本機器による生理学的負荷軽減が主観的な疲労感にも反映されたと考えられる.現場での本機器を評価する際には,主観的疲労度を用いることで生理学的変化を簡便に捉えられる可能性がある.
作業中の肩関節屈曲および肘関節屈曲角度には有意な差が認められなかった.一方,体幹伸展角度では,AS-off条件が最も大きく,AS-on条件では有意に減少した.これは,AS-off条件では肩関節屈筋群の疲労が蓄積し,体幹伸展による代償動作が生じたことを示唆している.一方,AS-on条件では肩関節トルクの補助によりDMの筋活動が軽減され,代償動作の必要性が減少したと考えられる.
本研究では40本のビス打ち作業を実施し,先行研究より連続作業本数が多く,より実作業に近い条件で同様の効果を確認した.肩関節90°以上の作業において1日の労働時間が1%増加すると,棘上筋腱炎や肩痛の発生率を増加させるとされており21),長時間の作業に対しても筋活動を軽減させることは,頭上作業労働者にとって作業効率や持続時間の向上に直接的に寄与すると考えられる.近年のフィールド研究では,本機器により僧帽筋や三角筋の筋活動が有意に低下することが示されている19,20).本研究は純粋な頭上ビス打ちに限定して検証したが,これらの知見は多様な実作業でも肩周囲の負担軽減が再現され得ることを示しており,大工など高負荷作業者への外挿可能性を支持する.本研究では作業位置を統一し,異なる身長の被験者間での負荷比較を可能にした.一定の作業位置で筋活動低下を示したことは現場運用において重要な知見である.
頭上ビス打ち作業において,外骨格型ロボットアシストスーツによる肩関節屈曲・外転運動のアシストは作業効率を改善した.特に女性では,Control条件で5名中2名が作業を中断した一方,AS-on条件では全員が課題を完遂した.また,Control条件で作業完了できた8名中6名はAS-on条件で作業完了時間が短縮した.反復的な頭上作業を有する職業の肩痛の発生率は,男性よりも女性が高いことが報告されており16) ,本機器は現場での作業効率を向上させるだけでなく,作業負荷の高い作業においても女性の職域を拡大させる可能性がある.ただし,先行研究では作業時間短縮と誤作業増のトレードオフも指摘されており,本研究では完遂率改善は得られたが誤作業について統計学的な検討は行っていない.
本機器の特性として,外転トルクのアシストが強いことが示唆された.AS-on条件はControl条件と比較してDMの筋活動は小さく肩関節外転角度が増加傾向を示したことから,本機器を用いた作業は軽負荷でより高所の作業を行える可能性がある.一方で,DAの筋活動にControl条件とAS-onで差を認めず,DMのみに有意差を認めたこと,また作業時に被験者から「肩が外に開くような感じがする」,「まっすぐ肩が上げにくい」といった声が聞かれたことから,本機器は外転トルクのアシストが強い特性を有していると考えられる.このような特性により,課題によっては通常の動作パターンと異なる動きが誘発される可能性があるため,機器導入時には個別の身体的特性を考慮した適切なアシストレベルの設定と機器のフィッティング,適切な動作練習の実施が重要である.
AS-off条件では,本機器の重量や関節運動の阻害などが作業パフォーマンスに及ぼす影響を検討した.AS-off条件は条件間で最も筋活動が高く,疲労度も最も強い結果であった.被験者ID7では他条件と比較し最も作業本数が少なく,作業を中断することとなった.体幹伸展角度も,AS-off条件が最も大きく,代償動作が顕著であった.この結果は,本機器におけるALの設定が適切でなければ,疲労度及び作業パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している.外骨格型ロボットアシストスーツは肩運動・バランス・脊柱負荷へ予期せぬ影響を及ぼし得るとの指摘があり15),実環境のフィールド研究でも上肢筋活動は低下しつつ腰背部の筋活動の増加が認められており,負荷移転が懸念される13).本研究で用いた機器は3.9kgと比較的重量があり,女性被験者の平均体重の約8%に相当した.実際にAS-offでの課題時は「重い」という感想が全被験者で得られており,機器自体が身体的負担を与える可能性が考えられた.今後は使用者の特性に合わせたAL選定基準の確立,個別フィッティングの向上,腰部指標のモニタリング,および機器の軽量化が必要である.
本研究にはいくつかの限界がある.第一に,サンプル数が小さく統計学的パワーが限定的である.ただしDMの%MVCの低下は効果量が十分であり(Cohen’s d = 1.01),主要な結果の妥当性は支持される.第二に,現場運用を考慮しすべての被験者で一定の作業環境で実施したことで,各被験者の身体負荷が統一されていない可能性がある.この点は実用性を重視した設計であるが,個人差の影響を完全には排除できていない.第三に,本研究ではビス打ち経験のない若年健常者を対象としており,熟練労働者や高齢者への一般化には注意が必要である.第四に,体幹伸展の減少が腰部負担軽減や姿勢改善にどの程度寄与するかは,本研究では腰部の詳細な評価を実施していないため明確ではない.第五に,品質指標は未評価であり,作業の質的側面については今後の検討課題である.
実環境での縦断的フィールド研究は,本機器の有効性と安全性を同時に検証し,設計基準の最適化に資するエビデンスを蓄積するうえで不可欠である14).今後は実際の労働現場での長期使用試験を通じて適用可能性を検証するとともに,異なる年齢層や作業負荷条件下での効果を評価し,汎用性の高い設計基準を確立することが期待される.
本研究に使用した上肢外骨格型ロボットアシストスーツは株式会社ダイドーより無償貸与を受けた.これ以外に開示すべき利益相反はない.
本研究の実施にあたり,多大なるご協力をいただきました西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部の皆様,および被験者の皆様に心より感謝申し上げます.また,外骨格型ロボットアシストスーツ「TASK AR 1.0」を無償で貸与いただいた株式会社ダイドー(大阪)に深く御礼申し上げます.