抄録
ポジティブ気分は意味表象の活性を促進させると考えられている.近年の研究から,認知機能に気分が及ぼす効果は気分の覚醒度に影響されることが示されているが,覚醒度の異なるポジティブ気分が語彙判断過程に異なる影響を及ぼすかは明らかでない.本研究では,24名の大学生に音刺激を提示することで高覚醒ポジティブ・低覚醒ポジティブ・中性気分を誘導し,それぞれの気分の下で語彙判断課題を行ってもらった.単語と偽単語に惹起されたN400の振幅は,高覚醒ポジティブ気分のときの方が中性気分のときよりも増大した.低覚醒ポジティブ気分と中性気分の間に差はなかった.これらの結果は,ポジティブ気分による意味処理の促進は,覚醒度に依存することを示唆している.