論文ID: 1715oa
自閉症スペクトラム仮説によれば,自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder: ASD)傾向が高い定型発達児者は,ASD児者と同様に,感覚的な変化に敏感であるという特性と,特に大域的変化に比べ局所的変化に敏感であるという特性を持つことが推定できる。この推定が正しいかどうかを検証するために,定型発達の成人を対象に研究を行った。まず,自閉症スペクトラム指数(autism spectrum quotient: AQ)を用いてAQ高群とAQ低群を集めた。次に,青年成人版感覚プロファイル(adult/adolescent sensory profile: AASP)を用いて実験参加者の感覚処理を調査した。さらに,聴覚刺激における局所・大域的変化に対するミスマッチ陰性電位(mismatch negativity:MMN)を記録した。その結果,AASPにおいてAQ高群にASDの成人と類似の傾向が示された。またAQ高群では,大域的変化に対するMMNが局所的変化に対するMMNに比べ大きいことが示された。この結果は,AQ高群が局所的変化の規則的パターンを容易に知覚することにより,局所的変化に対するMMNが生じにくくなることを示唆している。