抄録
本研究では, 3Hzで断続的に提示される光点歩行者を刺激とした2つの実験を行い, 仮現運動知覚の能動的過程と受動的過程が視覚誘発電位 (VEP) に及ぼす効果を検討した.光点歩行者は人間の主要関節を表す10個の小光点から構成され, 断続提示によりそれらの小光点の仮現運動が知覚される.実験1では, 前方歩行 (FW), 後方歩行 (BW), ランダム歩行 (RW), 静止系列 (SS) の4種類の刺激条件の識別を課題とし, 能動的知覚過程の効果を検討した.実験2では, RWとSSを用いて受動的知覚過程と課題負荷の効果を検討した.両実験において, 5つのVEP成分 (N60, P120, Nl85, P210, N280) が運動刺激 (FW, BW, RW) に対して認められた.実験1と実験2の比較から, N60とP210は能動的知覚過程を反映し, N280は受動的知覚過程と課題負荷を反映していることが示された.