生理心理学と精神生理学
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嫌悪ショックの予測可能性と制御可能性が認知的対処方略に及ぼす効果-聴覚N1波と心拍変動による検討-
石田 光男
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2003 年 21 巻 3 号 p. 205-216

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抄録

本研究は聴覚事象関連電位のN1波と心拍変動の高周波成分 (HF) から, 嫌悪ショック到来の予測可能性と制御可能性が認知的対処方略に及ぼす効果を検討した.被験者は, 予測可能・制御可能 (P-C) 群 (n=16), 予測可能・制御不可能 (P-UC) 群 (n=16), 予測不可能・制御不可能 (UP-UC) 群 (n=14) にいずれかに振り分けられた.P-C群とP-UC群は, 2種類の音刺激の一つを嫌悪ショックの関連音として, もう一方を無関連音として呈示されたが, UP-UC群は, 両方の音を無関連刺激として呈示された。嫌悪事態について覚醒度と感情価の評価 (9-point scale) が測定された.嫌悪事態において, P-C群は制御不可能な2群よりも, 関連音と無関連音の両方に対するN1振幅が増大し, 高い覚醒度を示した.一方, UP-UC群は, N1振幅が減衰し, 覚醒度は予測可能な2群より低かった.しかしながら, HF成分のパワー値には3群間で違いはなかった.N1波に反映された認知的対処方略と主観的反応および心臓血管系反応との関連性が議論された.

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© 日本生理心理学会
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