抄録
本研究は, 精神性発汗の生起は後続する発汗活動にとってどのような意味をもつかについて調べたものである.実験1では, 皮膚電位反応 (SPR) 振幅全体に占める陰性波成分の割合とSPRが生じてから汗の分泌が起こるまでの時間 (SPR-発汗潜時) との関係を調べた.実験には6名の被験者が参加した.陰性波成分率を被験者内で二分してt検定を行ったところ, 陰性波成分率が小さいほどSPR-発汗潜時は短くなることが分かった.この結果よりSPR陽性波成分が多くなるほど汗の分泌は速くなることが示唆された.実験2では導管内に残存する発汗量が多い状態ほどSPR陽性波成分が多くなると考え, 検証した.実験には8名の被験者が参加した.実験の結果, 導管内に汗が多く残存すると考えられる状況ほどSPR陽性波成分が頻発することを見出した.これらの結果を受けて, 発汗の効率化に関するモデルを考案した.