小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
発達・運動科学
健常若年成人の位置的頭蓋変形と運動パフォーマンスにおける左右差との関連
内尾 優黒米 寛樹河野 龍哉笹野 真央白水 杏奈高岡 翼
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 148

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抄録

【はじめに、目的】

乳幼児期に生じうる位置的頭蓋変形と発達との関連における報告はあるものの、その後のより高次な運動パフォーマンスに及ぼす影響については明らかにされていない。位置的頭蓋変形がその後の成長した運動に影響することが明らかになれば、位置的頭蓋変形は単なる乳幼児期の一過性の問題として捉えることはできない。本研究の目的は、位置的頭蓋変形の非対称性が運動パフォーマンスの左右差に及ぼす影響について明らかにすることである。

【方法】

対象は、現在整形外科的、神経学的疾患等による疼痛のない本 学在学中の大学生57名 (平均年齢20.5±0.7歳)とした。評価は、基本情報、身体機能評価、運動パフォーマンス評価を実施した。基本情報は、性別、年齢、身長、体重、利き足を調査した。また身体機能評価は、足関節背屈可動域、棘果長、握力、等尺性膝伸展筋力、頭部変形評価を実施した。頭部変形評価には、 3D画像撮影解析装置VECTRA®H2にて評価し、得られた後頭 部左右対称率の結果に基づき対象を頭部変形あり群17名、頭部変形なし群40名の2群に分類した。運動パフォーマンス評価は Modified Star Excursion Balance Testを実施した。床面の上に中心点を設定し、その点に片脚立位となり反対側の下肢で前方 ・後内方・後外方の3方向へ最大限リーチした距離を測定した。得られた各方向のリーチ距離から対象者の棘果長を100%として正規化した%下肢リーチ距離を求めた。さらに、前方・後内方・後外方の%下肢リーチ距離の左右差を絶対値にてそれぞれ算出した。解析は、頭部変形あり群と頭部変形なし群の2群に 分け基本情報、身体機能評価、運動パフォーマンス評価を比較した。さらに、運動パフォーマンスの左右差に影響を与える要因を明らかにするため、単変量解析にて2群間で有意差を認めた運動パフォーマンスと優位な相関関係を認めた基本情報、身体機能評価を独立変数、運動パフォーマンスを従属変数とした重回帰分析を行った。検定にはSPSS Version 28を用い、有意 水準は5%とした。

【結果】

2群間の基本情報の比較において頭部変形あり群は変形なし群に比べ男性が多く、身長が高く、体重も重かった。運動パフォーマンス評価では、頭部変形あり群は変形なし群に比べ後内方への%下肢リーチ距離の左右差が有意に大きかった (8.3 ± 6.9 vs. 4.7 ± 4.0)。他の基本情報、身体機能評価、運動パフォーマンス評価の左右差には有意差を認めなかった。後内方への %下肢リーチ距離の左右差と有意な相関関係を認めた基本情報、身体機能評価は、後頭部左右対称率 (r=-0.347, p=0.008)と身長 (r=0.281, p=0.036)であった。左右の後内方への%下肢リーチ 距離の左右差を従属変数とした重回帰分析では後頭部左右対称率 (p=0.041)のみが採択された。

【考察】

健常若年成人の運動パフォーマンスにおける左右差の偏りには、後頭部が左右非対称であることが影響する可能性が示唆された。乳幼児期に生じうる位置的頭蓋変形は早期より予防する必要性 が考えられた。

【倫理的配慮】

本研究は、東京医療学院大学研究倫理委員会 (承認番21-19H)の承認を得たのちに実施した。対象者には研究内容などについて文書および口頭で十分な説明を行い、書面にて同意を得た後に実施した。なお、同意説明文書には、研究参加は任意、同意しなくとも不利益を受けない、同意は撤回できること、研究の意義、目的等を明記した。

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© 2024 一般社団法人日本小児理学療法学会
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