小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
表彰候補演題②
定型発達児におけるbimanual coupling効果と微細運動技能との関係
信迫 悟志大住 倫弘中井 昭夫森岡 周
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 34

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抄録

【目的】

Bimanual coupling (BC)効果とは,片手で直線を描きながら同時にもう片方の手で円を描くと,直線が楕円形に歪む現象のことであり,これは片方の手で円を描く運動プログラムが,もう片方の手で直線を描く運動プログラムに影響するためである.したがって,BC効果の減少は,両手を同時に別々に操作する能力が高いことを表す.BC効果は6歳児で既に強くみられ,子ども (6歳,10歳)から成人 (20-30歳)にかけて減少することが分かっているが (Piedimonte et al., 2014),子どもにお けるBC効果と微細運動技能との関係を調べた研究は皆無である.そこで本研究では,定型発達児を対象にBC効果がどのような微 細運動技能と関連しているかについて調査した.

【方法】

定型発達児56名 (平均年齢±標準偏差:9.5±2.3歳,範囲:6-13歳,男児29名,右利き49名)が本研究に参加し,BC課題と微細運動技能テストを完了した.BC課題には,利き手で反復して直線を描く片手条件,利き手で直線を描きながら同時に非利き手で反復して円を描く両手条件があった.タブレット PCによって計測された利き手による直線軌道から両条件の楕円化指数 (ovalization index: OI値)を算出した.OI値が減少するほど,直線軌道が円形に変形する歪みがないことを表した.また両手条件のOI値から片手条件のOI値を減算することでBC効果を算出した.微細運動技能には,Movement Assessment Battery for Children-2nd editionのManual dexterity testを使 用し,利き手運動技能,非利き手運動技能,両手協調運動技能,利き手運筆技能,総合の標準化得点を各微細運動技能の指標と した.統計学的検討として,BC効果の有無を確認し,年齢を制 御変数とした各OI値と各微細運動技能の偏相関分析を実施した.

【結果】

両手条件のOI値は,片手条件のOI値と比較して,有意に増加した (t(55)=-10.028,p<0.001).偏相関分析の結果,片手条件のOI値と利き手運筆技能 (r=-0.296,p=0.028),両手協調運動技能と両手条件のOI値 (r=-0.271,p=0.045),および BC効果 (r=-0.313,p=0.020)との間に,それぞれ有意な相関関係を認めた.

【考察】

先行研究と一致して,6-13歳児におけるBC効果が確認された.6-13歳児において,両手条件におけるOI値および BC効果の減少,すなわち両手を同時に別々に操作する能力の向上と両手協調運動技能の向上との間には,重要な関係性があることが示された.

【倫理的配慮】

本研究は,所属施設の研究倫理委員会で承認された後に,ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の管理には十分配慮して実施した (承認番号:R4-41).対象児とその保護者には,事前に本研究の目的,方法,参加期間,いつでも参加を撤回できること,不利益がないこと,プライバシーの保護,学会 ・論文における公表について,文書による説明を行い,署名による同意を得た.

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© 2024 一般社団法人日本小児理学療法学会
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