抄録
ゴム手などに対する身体意識(運動主体感と身体所有感)に関して様々な条件で調べられているが,高次レベルの運動意図や運動意図の達成度合いとの関係については十分議論されていない.そこで,実験1では,物体把持の運動意図が身体意識に影響するかどうかを調べるために,仮想空間内の仮想物体(立方体)を把持して移動させる操作課題と仮想物体を表示しない状態で操作課題と同様の動作を行うパントマイム課題を用いて比較検討した.この結果,操作課題実行後の両感覚が有意に高くなった(p <0.05).実験2では,運動意図の達成度との関係を調べるために,成功した結果を高確率で提示する成功条件と失敗した結果を高確率で提示する失敗条件を比較検討した結果,成功条件での課題実行後の両感覚が有意に高くなった(p <0.05).従って,身体意識の成立過程において物体把持の運動意図が関与し,さらに運動意図が達成できたかどうかも影響することを示している.