小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
早産・低出生体重
修正36週で慢性肺疾患と診断される極低出生体重児のDubowitz神経学的評価スコアの特徴
峯 耕太郎儀間 裕貴笹尾 丞子矢島 侑実丸山 秀彦諫山 哲哉上出 杏里
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 41

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抄録

【はじめに、目的】

極低出生体重児 (VLBW)は神経学的障害のリスクが高いとされ,ハイリスク児としてフォローアップ健診の対象とされている. また,慢性肺疾患 (CLD)はVLBWの合併症として多い疾患であり,従来の定義では日齢28での酸素投与の有無で診断されるが,修正36週での呼吸補助の方法による診断は,在胎期間の個体差 も考慮されており,より合理的であると考えられている (Jensen EA, 2019).CLDの罹患は中・長期的な発達予後に悪影響を及ぼすとする報告も多い (Cheong JLY, 2018)が,より早期の新生児の神経学的発達との関連に着目した報告は少ない.本研究の目的は, 修正36 週でCLD と診断されるVLBW の Dubowitz神経学的評価 (Dubowitz評価)のスコアの特徴を明らかにすることとした.

【方法】

デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象は2017年1月~ 2021年12月に当院の新生児集中治療室に入院したVLBWのうち,先天異常を有する児は除外し,修正37~42週の時点で Dubowitz評価を実施した児とした.診療録より基本情報 (性別,在胎期間,出生時の身長・体重・頭囲),合併症 (修正36週での CLD,症候性動脈管開存症,脳室内出血,脳室周囲白質軟化症,敗血症,壊死性腸炎,消化管穿孔,治療を要する未熟児網膜症 )の有無,Dubowitz評価のスコア (トータル,6つのカテゴリー, 34の評価項目)を抽出した.なお本研究におけるCLDとは,修 正36週時点で酸素投与または呼吸補助を必要とするものと定義した.対象をCLDの有無により2群に分け,基本情報と合併症 の有無,Dubowitz評価スコアの群間比較をするために,t検定, Mann-WhitneyのU検定,χ2検定を行った.また,従属変数に Dubowitz評価のトータルスコアを,独立変数に性別,在胎期間,出生体重,CLD,症候性動脈管開存症,脳室内出血または脳室 周囲白質軟化症,敗血症,壊死性腸炎または消化管穿孔,治療を要する未熟児網膜症の有無を投入して重回帰分析を行った.統計学的有意水準は5%とした.

【結果】

124例のVLBWが対象となり,そのうちCLD群は56例であった.基本情報では,CLD群において在胎期間,出生時の身長・体重 ・頭囲が有意に小さく,合併症の有無では症候性動脈管開存症,敗血症,治療を要する未熟児網膜症の発症割合が有意に高かっ た (p<0.01).Dubowitz評価のトータルとカテゴリースコアには群間で有意差は認めず,評価項目では姿勢,膝窩角,頭部ラグのスコアにおいて,CLD群で低値の頻度が有意に高かった (多重比較後 p<0.05).重回帰分析の結果,有意な項目として抽出されたのは,性別 (B=2.14, p<0.01),出生体重 (B=0.004, p<0.05),敗血症の有無 (B=3.27, p <0.01)であった.

【考察】

修正36週でCLDと診断されるVLBWのDubowitz評価 スコアを検討した結果,筋緊張カテゴリーの一部の項目に有意差がみられたが,トータルやカテゴリースコアにはみられなかった.Dubowitz評価は,評価時点での児の神経学的成熟度をよ く反映すると報告されている (儀間,2015).本研究の結果は,修正37~42週におけるDubowitz評価のスコアには,CLDの影 響よりも出生体重などの神経成熟学的要因が強く反映されている可能性を示唆した.

【倫理的配慮】

本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に則り,当院倫理員会にて承認された.対象者における研究参加の同意と撤回権に関しては,オプトアウトにて対応した.

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© 2024 一般社団法人日本小児理学療法学会
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