小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
早産・低出生体重
訪問看護ステーションにおける医療的ケアのない極低出生体重児の発達支援の取り組み
川島 瞳辻 悦子荒川 依子伊藤 百合香梶原 厚子岡崎 薫
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 45

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抄録

【はじめに】

極低出生体重児の神経学的合併症の頻度は未だ高く、その早期発見とフォローアップのためのシステム作りは重要な課題である。しかしながら、フォローアップに関しては出生した医療機関や小児専門病院の比重が大きい。地域での療育支援の体制は各都道府県や地域間での格差が大きく、支援の充実が図られているとは言い難い。近年、訪問看護・リハビリテーションにおいて医療的ケアを要する児への支援は退院後早期から導入されている。一方で、医療的ケアのない極低出生体重児に関しての介入報告は少ない。極低出生体重児を含むハイリスク児は未熟性を抱えながら育つため、授乳や病気にかかりやすいなど育てにくさもあり、母親の育児不安は高い。また発達面の問題の発生頻度も高いことから療育上の問題が生じやすいと報告されている。今回、近隣の総合周産期母子医療センターである東京都立小児総合医療センターと連携の元、訪問看護ステーションにおけるハイリスク児への育児支援・発達支援の機会を得たのでここに報告する。

【対象】

2021年9月~2023年3月までに訪問看護依頼があった極低出生体重児のうち医療的ケアのない8名 (在胎週数27.8±3.4週、出生体重901±327g)。

【方法】

診療記録や共有ツールの記録、家族との連絡ツールから、紹介理由、相談内容、困りごと、支援内容について後方視的に調査した。

【結果】

訪問開始時期:修正0ヵ月~修正5ヵ月。訪問頻度:平均2.1回/週。紹介理由:健康観察、発達フォロー、育児支援(100%)、反り返 る(50%),定頸が遅い(12.5%)。相談内容:排便ケア (87.5%)、哺乳・離乳食(75%)、体重増加 (62.5%)、皮膚トラブル (50%)、漠然と発達のことが不安(100%)、遊び方が分からない(75%)。 困りごと:反りやすい、過敏、低緊張、身体が硬い等の身体の 扱いにくさ (100%)、泣いてしまうので1日中抱っこ(37.5%)。支援内容:看護では授乳や離乳食の栄養面の相談、排便ケア、皮膚トラブルに対してオイルマッサージ、保湿ケア。理学療法では、ポジショニング、ストレッチ、運動発達の促進、発達段階 に合った遊びの提供、臥位・座位環境の支援、食事環境の支援、装具療法。療育センターへの移行や保育園入園にあたり情報提 供。

【考察】

外来フォローでは見えずらい育児の不安や困り感、家庭での支 援の必要性を知ることが出来た。ほぼ全例に身体の扱いにくさ、反りやすさ、発達がゆっくり、離乳食の姿勢環境の困り感があった。訪問ではより生活に密着した育児支援・発達支援ができるので、ニーズに沿った、具体的で個別性の高い支援を行うことができる。理学療法士及び看護師の協働による遊び方や離乳食の進め方、環境面のアドバイスを通して、家族の不安軽減に努め、育児を楽しむ一助となっていると考える。子どもたちが地域の中で育っていけるよう保育園や療育機関への情報提供も有益と考える。ハイリスク児のフォローアップは、子ども達の生活している地域ぐるみでの支援体制が求められている。その 1つとして訪問看護・リハビリテーションが担える役割の可能 性を見つけた。

【倫理的配慮】

所属施設の承認を得るとともに、ヘルシンキ宣 言に則り、個人が特定できないよう個人情報の扱いに配慮した。

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