2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 48
【はじめに、目的】
重症心身障害児・者(以下、重心児者)は、運動量の低下や抗てんかん薬の服用などにより、骨折発生率が高いことが報告されている。骨折による活動量の低下は機能低下に繋がるため、骨折の予防は重心児者において重要であり、そのリスクを把握することは、運動強度の設定やプログラムを考える上で必須であ る。骨折のリスクを把握する指標として骨密度があり、これは、運動機能や服薬状況、筋量や栄養状態などの身体組成と関連す ると言われているが、重心児者での検討は不十分である。以上より、本研究では、当施設の重心児者の骨密度の特徴について、運動機能の違いや服薬状況、筋量や栄養状態などの身体組成から明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当施設の入所者25名とした (男性:13名、女性:12名、 30.8±8.9歳、16~62歳)。対象者の情報としてカルテより骨 粗鬆症に対する治療薬、抗てんかん薬使用の有無、立位保持の可否を収集した。 骨密度の測定方法は定量的超音波測定法で端座位姿勢にて測定した。骨密度は同年齢および同性の対象者の基準値に対する値のZ偏差値を解析の対象とした。身体組成については、骨格筋指数のSkeletal Muscle mass Index (以下、SMI)、体水分量や栄養状態の指標であるExtracellular Water/Total Body Water(以下、ECW/TBW)、Phase Angle(以下、PhA)を体成分分析装置 (In Body S10)にて計測した。Z偏差値について骨粗鬆症に対する治療薬、抗てんかん薬使用の有無、立位保持の可否による違 いをMann-WhitneyのU検定にて比較した。またZ偏差値とSMI、 ECW/TBW、PhAとの関連をSpearmanの順位相関係数にて検討 した。
【結果】
Z偏差値は平均が-3.79であり全対象者が負の値を示していた。また、Z偏差値は立位保持の可否において有意差を認め (p=0.001)、立位保持が不可能な群において低値を示した。一方で、骨粗鬆症に対する治療薬と抗てんかん薬使用の有無ではそれぞれ有意差を認めなかった。Z偏差値と身体組成の関連性では、SMIとの間に有意な正の相関(ρ=0.65、p = 0.001)、 ECW/TBWとの間に有意な負の相関を認め(ρ=-0.47、p =0.02)であった。一方で、Z偏差値とPhAとの間には有意な相関は認めなかった。
【考察】
重心児者において、骨密度は全体的に著しい低下を認めた。特に、立位保持不可能な対象者では低値を示した。要因として、骨のリモデリングが立位保持を行うことで促進されたことが考えられる。そのため、立位に関わる要素の筋量は骨密度が高いほど高値であることや筋量の主な成分である体水分を示す ECW/TBWは骨密度が高いほど低値という関連性も立位保持能力に影響するものと考えられる。一方で、今回の結果では、骨粗鬆症に対する治療薬と抗てんかん薬の使用による影響と栄養状態との関連性は不明確であった。服薬に関しては、本研究の対象者25名のうち6名で骨粗鬆症に対する治療薬を服用し、25名のうち24名で抗てんかん薬を服用しており、対象者数の差が大きく比較が困難であったと考えられる。また、抗てんかん薬の種類や服薬量、服薬回数の違いも関連要因であると考えられるため、今後詳細に検討する必要性があると思われる。
【倫理的配慮】
本研究は、国際医療福祉リハビリテーションセンターなす療育園の施設長の許可を得て実施している。