小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
整形外科疾患・染色体異常
居宅訪問型児童発達支援から通所の療育へ移行することができた13トリソミー児の報告
松本 慎平毛利 雅英
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 71

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抄録

【はじめに】

今回、13トリソミー児に対して居宅訪問型児童発達支援を利用し関わる機会を得た。本疾患は10,000~20,000出生に対して1人程度の割合で発生し、1年生存率が約10%である。合併症も多く、本症例は啼泣時に憤怒痙攣がみられ、数 10秒間呼吸停止を繰り返すため外出することが難しく、居宅訪問型児童発達支援で関わることとなる。介入後1年半かけて通所へ移行することができた。居宅訪問型児童発達支援から通所の療育へ移行できた報告は少なく、今回制度を利用して移行ができた症例であったため報告する。

【症例報告】

本症例は33カ月女児。生育歴は在胎36週、1681 gにて出生。特異的顔貌及び先天性心疾患 (心室中隔欠損、大動脈弓分枝異常)、先天性眼異常 (両白内障、緑内障)と合併症を認めたため、染色体検査を行った結果13トリソミーと診断される。墳怒痙攣もあり、啼泣時数10秒間呼吸停止する様子がみられ、屋外へ外出する事へのリスクが高く、通院にも保護者の不安感が伴っていた。その為、屋外に保護者と共に安心して出られるように居宅訪問型児童発達支援を利用し、理学療法を週 1回の頻度で開始した。

【経過】

16カ月時より発達支援を目的に介入。未定頸で仰臥位か保護者の抱っこで日中過ごす。寝返りも可能だが、腹臥位は 10秒程度の保持時間。全盲だが音に対しては反応よく、音楽などを聴いて周囲の状況を感じて楽しむことができる。しかし一定の場所に留まることへの不安もあり、座位保持装置は5秒程度しか使用できず、食事等は抱っこ介助が基本となる。また憤怒痙攣も度々起き、長い時には1分程度呼吸停止することもあった為、まずは「座位で好きなおもちゃで遊ぶ時間を増やす」ことを目標に介入する。22カ月時、30度程度リクライニングをかけた状態で座位姿勢をとることが可能となり、近隣をベビーカーで散歩する機会が増える。また憤怒痙攣も減少し、呼吸停止になっても10秒程度で戻ることができるようになる。1人遊びの時間も増加し、日中保護者も安心して過ごせる時間が増えたことから、目標も変わり「車で母親と2人で外出できる」へと変化する。その後、27~32カ月時の間に保護者と離れる機会を3回、約1~2時間ずつ実施。その間に母親から「通所への意向」が聞かれるようになり、3回目の前には車のチャイルドシートのポジショニングを実施し、近隣へ二人で出かける機会を持つことができた。通所移行時には頭部保持安定し、寝返りで周囲を探索する行動が増え、座位保持装置を使用した座位も 30分程度可能となる。車移動への保護者の不安感が軽減され、通所で過ごす時間を持つことができた。

【考察】

本症例は憤怒痙攣での呼吸停止や姿勢保持の問題が外出・通所移行を困難にしていたが、発達支援で関わる中で運動発達の変化が現れ、それに伴い保護者の気持ちの変化が認められた。また早期から在宅にて関わることでフェーズに合った関わりを保護者と確認し、細かく現状の課題や目標を共有していくことで保護者の決定できるタイミングを図ることができた。そのような積み重ねを関係機関と共有し連携することで段階を踏んで通所へ移行することができたと考える。

【倫理的配慮】

本報告はヘルシンキ宣言に基づき、対象児の保護者には口頭・書面にて説明を行い同意を得た。

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