小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
整形外科疾患・染色体異常
ダウン症児へのインソール治療に対する1年間の足アーチ高率の変化と使用開始月齢の関係
上條 貴弘椙田 芳徳
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 72

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抄録

【はじめに、目的】

ダウン症児 (DS児)は関節弛緩性により生じる扁平足に対してインソールを処方されることが多いが、治療経過と効果に関する報告は少ない。そこで、大久保らの足アーチ高測定法を用いて使用開始前と1年後の値を比較した。また、インソールの使用開始時期と足アーチ高率との関係性についても検討することとした。

【方法】

対象は当院にてPT介入を行っているDS児の内、独歩を獲得しインソール治療開始から1年以上経過した6名 (5.9歳±2.04、男児5名、女児1名)である。効果指標として、足アーチ高測定法により得られた値より足アーチ高率 (舟状骨高/足長×100)を 算出し、非荷重時/荷重時の作製前/1年経過後の値について、左右それぞれの値の差、及び変化率を算出した。統計学的検討に はWilcoxonの符号付順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。また、足アーチ高率の1年間の変化率とインソール使用開始月 齢との関係をSpearmanの順位相関係数を用い検討した。

【結果】

非荷重時の足アーチ高率はインソール使用開始前/1年後の値の変化率は右-8.33%・左-8.32%となり有意差は認めなかった (右 :p= 0.269、左:p=0.124)。荷重時の足アーチ高率は使用開始前/1年後の値の変化率は右2.32%・左29.36%となり有意差は認めなかった (右:p= 0.794、左:p=0.269)。インソール使用開始月齢 (中央値29.5ヶ月、四分位範囲25.25-30.75ヶ月)と変化率の相関係数では、非荷重時右下肢が大変弱い相関 (rs=0.11429)、左下肢が弱い相関 (rs=0.22857)、荷重時右下肢が弱い相関 (rs=0.28571)、左下肢が中等度の相関 (rs=0.57143)を認める結果となった。

【考察】

効率的な歩行には足アーチの形成が重要である。多和田らによるとDS児の扁平足は非DS児と比べて改善されにくいとされて いる。また、山本らによるとDS児のアーチ形成率は装具の使用に関わらず低く、アーチの出現年齢も遅いため、独歩開始早期からインソールの使用と継続が重要であると述べている。今回の検討では足アーチ高率の改善は見られなかったが、アーチ高を維持できており一定の効果があったものと考える。また、インソール使用開始月齢と足アーチ高率の変化率との相関にて特に荷重時に認めたことから、インソールを早期から使用することでアーチ形成へ効果的な介入が可能であることが示唆された。

【倫理的配慮】

本研究はヘルシンキ宣言に則り、保護者に研究の趣旨を説明し同意を得て実施した。

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© 2024 一般社団法人日本小児理学療法学会
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