2025 年 3 巻 1 号 p. 58-68
重度の心疾患をもつ乳幼児は,心不全に伴い発達の遅れを認める場合があり,継続的な理学療法が必要となる可能性もある。今回,特発性拡張型心筋症をもつ乳児の発達の遅れに対する理学療法を担当する機会を得た。医師と理学療法の内容や運動強度,運動時間などを検討し,リスク管理を十分に行いながら児の発達を促した。理学療法開始時より,母親からは,活動することに関する児の心不全の増悪について不安が聞かれ,ポジショニングや遊び方の指導を行った。その結果,心不全の増悪なく,遠城寺式乳幼児分析的発達検査(遠城寺式発達検査)から,移動能力は2ヶ月程度から6ヶ月程度へ,手の運動 · 基本的習慣 · 対人関係 · 発話は5ヶ月程度から7〜9ヶ月程度となった。母親は,理学療法実施以外でも,ベビーカーでの散歩やプレイルームで児と遊ぶことが増えた。退院時には「家族で過ごすことが楽しみ」と話し,不安の訴えは聞かれなかった。