小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 宮本 清隆, 楠本 泰士, 加藤 愛理, 脇 遼太朗
    原稿種別: 原著
    2025 年 3 巻 1 号 p. 3-20
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/05/20
    ジャーナル フリー

    目的:肢体不自由特別支援学校から「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」を,リハビリテーションセンターから目標に関する情報(以下,リハ目標シート)を相互に提供し,それらの情報の活用状況と有用性を明らかにすることを目的とした。

    方法:リハビリテーションセンターに通院中の児童生徒に関わる担任教員24名と理学療法士3名を対象とし.記名式質問紙にて共同意思決定の実践状況,児の所属,横地分類,目標の分類,カナダ作業遂行測定の変化量,「リハ目標シート」及び「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の活用状況と有用性について調査した。情報提供の有用性に関する自由記述の内容は質的記述的分析を行った。

    結果:対象児の約半数でカナダ作業遂行測定が2点以上改善した。「リハ目標シート」,「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」についてほぼ100%有用と回答していた。質的分析から各機関で提供した情報の活用状況と有用性が確認された。

    結論:肢体不自由特別支援学校とリハビリテーションセンター双方向に情報を提供したことで,児のより多面的な実像を捉えられたことが示唆された。質的分析から理学療法士は,自立活動の理解を深めること,教員は,定量的評価を実施し,具体的な目標設定を行うことなどが,今後の課題として抽出された。

  • 阿部 広和, 楠本 泰士, 樋室 伸顕
    原稿種別: 原著
    2025 年 3 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    目的:第1-9回「日本小児理学療法学会学術大会」の研究演題抄録を計量書誌学的に分析し,小児理学療法研究の傾向とその年次推移を明らかにすることを目的とした。

    方法:選択基準に基づき抽出した研究演題抄録を2名の評価者が解析項目の各定義に従ってコード化した。筆頭演者の所属,研究デザイン,研究目的,対象者の疾患名 · 状態,アウトカムの分類に関して全553演題を分析した。

    結果:研究デザインは症例報告,研究目的は解剖 · 生理 · 病態が最も多かった。対象者の疾患名 · 状態は,脳性麻痺が最も多く,健常児,神経発達症群が続いた。アウトカムの分類は,活動と参加の「運動 · 移動」が最も多かった。症例報告は206演題あり,そのうち81演題(39.3%)で「定量的アウトカムなし」であった。

    結論:本研究の結果は,今後の小児理学療法研究の方向性を示唆し,質の向上に貢献する可能性がある。

  • 小笠原 悠人, 渡辺 玲菜, 渡邉 観世子
    原稿種別: 原著
    2025 年 3 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では重症心身障害児 · 者(重症児 · 者)の身体機能の特性を把握することを目的に,身体組成の特徴の把握と運動機能による比較を行った。

    方法:72名の対象者を運動機能レベルにより寝たきり群26名,寝返り可能群9名,座位保持可能群13名,立位保持 · 独歩可能群24名の計4群に分類し,Bioelectrical Impedance Analysis法を用いて身体組成を計測した。

    結果:重症児 · 者ではBMI,基礎代謝率,SMI,PhAが低値を示し,体脂肪率,ECW/TBWが高値を示す傾向が見られた。また体重,基礎代謝率,SMI,PhAは寝たきり群が立位保持 · 独歩可能群より有意に低く,体脂肪率は寝たきり群が寝返り可能群と立位保持 · 独歩可能群より有意に高く,ECW/TBWは寝たきり群が立位保持 · 独歩可能群より有意に高いことが示された。

    結論:重症児 · 者の身体組成値は一般的な基準値と比較し極めて不良な値を示す傾向が見られた。また,特に重度な運動機能障害を持つ重症児 · 者は立位保持 · 独歩可能な児 · 者に比較し,低筋量や低栄養状態であることが確認できた。

  • 大曲 正樹, 南野 初香, 原品 結衣, 松井 香菜子, 浅井 明美, 鈴木 里枝, 熊谷 有加, 内山 圭, 河合 美早, 齋藤 香保, ...
    原稿種別: 原著
    2025 年 3 巻 1 号 p. 43-57
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/10/21
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,重症心身障がい児(者)(以下,重症児)の呼吸機能を簡便かつ包括的に評価するための新しい評価スケール「重症心身障がい児呼吸ケア必要度評価スケール(S-CARES)」を開発し,その信頼性と妥当性を検討することを目的としている。

    方法:103例の重症心身障害児施設の入所者を対象とし,S-CARESを用いて身体機能,呼吸状態,呼吸ケアの必要性から呼吸機能をスコア化した。またスケールの信頼性と妥当性を検討した。

    結果:S-CARESの高い内的一貫性(Cronbachのα係数0.898)及び検者間の信頼性(重み付けカッパ係数0.922〜1.0,p<0.001)が示された。さらに,超重症児判定基準との相関関係(rs=0.894,p<0.001)も示され,基準関連妥当性が確認された。

    結論:これらの結果は,S-CARESが重症児の呼吸機能の重症度を評価可能なスケールであることを示唆しており,その活用は重症児の呼吸ケアの向上や呼吸器感染症の予防に寄与する可能性がある。今後は,異なる年齢や重症度を持つ重症児への適用性,有用性の検討が必要である。

症例報告
  • 岡村 綾子, 呂 隆徳, 村岡 法彦, 伊東 修一, 島田 空知, 岡 秀治, 中右 弘一, 遠藤 寿子, 大田 哲生
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 3 巻 1 号 p. 58-68
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    重度の心疾患をもつ乳幼児は,心不全に伴い発達の遅れを認める場合があり,継続的な理学療法が必要となる可能性もある。今回,特発性拡張型心筋症をもつ乳児の発達の遅れに対する理学療法を担当する機会を得た。医師と理学療法の内容や運動強度,運動時間などを検討し,リスク管理を十分に行いながら児の発達を促した。理学療法開始時より,母親からは,活動することに関する児の心不全の増悪について不安が聞かれ,ポジショニングや遊び方の指導を行った。その結果,心不全の増悪なく,遠城寺式乳幼児分析的発達検査(遠城寺式発達検査)から,移動能力は2ヶ月程度から6ヶ月程度へ,手の運動 · 基本的習慣 · 対人関係 · 発話は5ヶ月程度から7〜9ヶ月程度となった。母親は,理学療法実施以外でも,ベビーカーでの散歩やプレイルームで児と遊ぶことが増えた。退院時には「家族で過ごすことが楽しみ」と話し,不安の訴えは聞かれなかった。

  • 木村 優希, 樋口 滋, 秋山 亜衣, 楠本 泰士, 阿部 広和, 儀間 裕貴
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 3 巻 1 号 p. 69-80
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー

    目的:今回,粗大運動能力分類システムレベルⅢの学童期の脳性麻痺児に対し,学校版作業選択意思決定支援ソフト(ADOC-S)を用いて目標設定を行い,ホームプログラムにより日常生活動作のパフォーマンスの向上を認めたため報告する。

    症例と経過:ADOC-Sを用いて本人 · 保護者と協働で目標設定を実施し,セルフケアに関連した複数項目が選択された。介入にはホームプログラムを設定し,実施期間は1年とした。自宅での自主的な練習に対し,理学療法士や作業療法士は継続的にアドバイスや称賛 · 励ましを行った。徐々に本人や保護者の自宅での練習に対する姿勢にも変化がみられていき,開始から1年後,目標に対する本人や保護者の満足度やセルフケアのパフォーマンスに向上を認めた。

    結論:セルフケアの向上には,ホームプログラムに加えて,ADOC-Sによる協働での目標設定や保護者の行動の変化も寄与したと考える。

スコーピングレビュー
  • 根本 清香, Nisasri Sermpon, 儀間 裕貴
    原稿種別: スコーピングレビュー
    2025 年 3 巻 1 号 p. 81-103
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2024/07/10
    ジャーナル フリー

    目的:母体が運動中の胎児の運動を客観的 · 経時的に計測する手法は報告されていない。この手法を検討するにあたり,これまでにどのような胎動の計測方法が報告されているかについてスコーピングレビューにより明らかにする。

    方法:スコーピングレビューのプロトコルであるPRISMA-ScRに従い,胎児,運動,計測の3つの概念に基づくキーワードを用いた検索式を立て,PubMedにて文献検索を行った。タイトル · アブストラクトによるスクリーニングと本文による適格性の評価を実施し,採用文献の胎動計測方法,計測時間等の情報を抽出した。

    結果:1,728件の文献が検出され,63件が採用文献となった。客観的な胎動計測には主として加速度計と超音波技術が使用されていた。最長の計測は6.39±1.2時間で加速度計による計測であった。

    考察:加速度計による計測では胎動の頻度や持続時間などの量的側面を,超音波による計測では量的側面に加えて表情や胎動の種類などの質的側面を評価することを目的とする報告が見られ,その目的に応じた計測方法の選択が必要であることが示唆された。

    結論:母体が運動中における胎動の計測方法を検討する上では,加速度計が有用であることが示唆された。

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